参院選も終盤に入り、最後の情勢報道が出そろってきた。一部の選挙区では、調査方式によって結果が異なる影響がもろに出ており、それが報道各社の読みの差にもつながっているが、比例区は特に読みづらい。
2016年参院選比例区で、ネットを中心にした選挙活動で野党候補者最多の29万票を集めた新党改革(当時)の山田太郎氏の事例がまさに典型だが、いまや30代で3割未満、20代に至っては5%ほどしか固定電話を持っていないご時世なわけだから、今回は自民から立候補している山田氏のようなサプライズが局所的に起きる可能性は捨てきれまい。
その中で3年前の参院選の時期と明らかに変わったことといえば、仮想通貨あらため暗号資産の社会的浸透が挙げられよう。日本仮想通貨交換業協会が昨年4月、金融庁に提出した報告書によれば、国内の暗号資産(資料当時は仮想通貨)の取引量は、前回参院選のあった2016年時点から2017年時点で急増。現物取引が12兆7140億円、証拠金・信用・先物取引に56兆4325億円。ユーザー数は350万人程度(20〜40代で9割)にのぼったようだ。
ただ、この年は今から見れば「絶頂期」。暗号資産長者を意味する「億り人」が流行語大賞の候補にノミネートされるような過熱ぶりだったが、その翌年、コインチェックの巨額流出事件があってから市場が一気に冷え込んだのは周知の通りだ。
こうした経緯から、日本は、金融当局による暗号資産の法規制が先進国ではもっと早く整備されたとされるが、取引した暗号資産が高値をつけた後に売却した場合、いまの税制では、雑所得扱いとなり、最大で55%も課税されてしまう。同じ金融商品でも株の場合は約20%だから、かなりの差だ。
今年に入り、ビットコインの価格が回復傾向を見せているが、税率の差が取引意欲を阻害するのは明らかで、アゴラでもおなじみの藤巻健史氏(参議院議員、日本維新の会)は、税制改革を主張してきた。
主張の具体的な中身は、専門メディア「コインテレグラフジャパン」のインタビューに譲りたいが、暗号資産を日本経済復活の起爆剤にすることが持論とあって、アゴラでも度々税制改革の必要性を強調している。
・GAFAとの格差対策、日本の切り札は仮想通貨だ(2018年12月22日)
・暗号資産(仮想通貨)の税制改革は進むか? (2019年05月31日)
藤巻氏は、参院選を見越し、税制改革を望む暗号資産ユーザーの支持を集めるため、昨年12月にはその名もズバリの政治団体「仮想通貨税制を変える会」を発足。「最高税率55%の総合課税から20%の分離課税へ!」などと訴え、参院選の政策にも掲げている。
特に取引に熱心な30代は固定電話離れをしており、世論調査で動向を十分把握できていそうにないから投票動向は興味深い。
報道各社の選挙情勢報道では、維新は比例で改選時の4議席以上は確保の見通し。ただし抜群の知名度と地盤を持つ鈴木宗男氏をトップに有力候補がひしめいており、今後の維新の議席の上積みがなるかにもよるが、藤巻氏が当落線の厳しい争いを繰り広げているとみられる。暗号資産ユーザーの政治意識を探る上でも藤巻氏の得票の動きは注目される。
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」