陸上自衛隊、2系列の装輪装甲車ファミリーを導入の不思議

陸上自衛隊、2系列の装輪装甲車ファミリーを導入へ(東京防衛航空宇宙時評)

防衛省が陸上自衛隊用に2種類の装輪装甲車ファミリー「共通戦術装甲車」と「次期装輪装甲車」を導入する方針であることが、当サイトの取材によってわかった。

「共通戦術装甲車」は16式機動戦闘車と共に即応機動連隊の中核を構成する8輪装甲車で、16式をベースとした三菱重工の「MAV」(Mitsubishi Armoured Vehicle)に絞られている模様で、本年度予算に参考品購入費として計上された23億円では、MAVが調達される可能性が高い。

共通戦術装甲車では歩兵戦闘車型、偵察型、120mm自走迫撃砲型などの導入が計画されているが、歩兵戦闘車型は装軌式の89式装甲戦闘車を後継する車輌ではないとの話もある。

「次期装輪装甲車」は96式装輪装甲車の後継という位置付けで、2018年7月に開発中止が決定した装輪装甲車(改)の調達計画を仕切り直したものと見られる。

96式装輪装甲車(陸自第6師団サイトより:編集部)

まあ、不思議な話です。陸幕防衛部と装備庁のすりあわせができていない感じを受けます。
装甲車両のファミリー化が実現するのは歓迎ですが、なんで二種類の8輪装甲車が必要なんでしょうかね。
「共通戦術装甲車」は即応機動連隊用で、「次期装輪装甲車」はその他部隊で使用する、主に隊員輸送に供するものだということになっています。機甲部隊で使う89式の後継などは別途調達するようです。

我が国では内地で本格的な戦闘が発生する可能性は極めて小さいと大綱にもかいてあります。であれば重量級で調達及び維持コストの高い8輪装甲車がそんなにいるんでしょうかね?
本当に6輪や4輪車輌じゃ駄目なんでしょうか。4輪といっても陸自でも導入しているブッシュマスターは8輪の96式よりも余程路外装甲能力は高いです。内地で使う車輌は4輪、6輪でもいいんではないでしょうか。少なくともそれを真剣に検討すべきだったのではないでしょうか。

更に申せば、軽装甲機動車と高機動車を統合した次世代車輌も検討されていますが、これも装甲車になるようです。トヨタが関心をもっていると噂されています。単に米陸軍の真似をしているように見えますが、きちんとリサーチをしたのでしょうか。

本来フランスのスコーピオン計画のように、主要装甲車両のポートフォリオと総予算、取得数、調達期間、その根拠を納税者と政治に見せるべきだと思います。

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自が導入したAAV7は、溶接がいい加減あるいは不十分な車体が結構あって現場の部隊は困窮との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年7月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。