政治家言葉というものがあります。ビジネスでも政治でも定量化できる表現はすべて「数値化」することが望ましいはずです。
「もっと頑張ります → 10社の新規開拓をします」「一生懸命にやります → 100万円の売上げをあげます」。このように「あいまい表現」を数値化すると質が上がります。
難しい政治家言葉の真髄とは
期限に関する政治家言葉があります。「速やかに」「遅滞なく」「直ちに」の3種類です。これは法律上においても、時間的即時性に関する言葉として使いわけがされています。
「速やかに」は期限を定めているわけではないので、すぐにやらなくても問題がありません。「遅滞なく」も同じです。さらに「遅滞なく」は「事情の許す限り~」の意味で使用されます。つまり事情があればやらなくても許されるのです。「遅滞なく対応することを検討したが、問題が生じたことから検討は進んでいない」。このように使用します。
もっとも即時性が高いのは「直ちに」です。「即時に」「いま直ぐに」という意味があります。「火事を見つけた。遅滞なく消防車を呼んだ」「交通事故が発生した。可及的速やかに救急車を呼んだ」とは言いません。即時性の高い順番で考えるなら「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」の順番になります。
ほかにも、政治家特有の言い回しがあります。「前向きに検討する」「対応を協議する」「可及的速やかに対処する」「全力を挙げて対応する」「厳粛に受け止めて」などの言葉を聞いたことはありませんか。こうした言葉はなにも伝えていないことと同じです。
【お役所言葉の例】 【真意】
「前向きに検討する」 → 結局はなにもしないこと。
「対応を協議する」 → 先延ばしにすること。
「可及的速やかに対処する」 → 結局はなにもしないこと。
「全力を挙げて対応する」 → 普通に対応するよう検討する。
「厳粛に受け止めて」 → ほとぼりが冷めるのを待つ。
「本件につきましては前向きに検討したいと思います」「本件についての対応を協議します」は、なにかを伝えているようでなにも伝えられていない典型になります。
政治家言葉が連続すると、なにを言いたいのかがわからなくなります。このような場合は、誰が読んでも同じ理解ができる言葉に置き換えなければいけません。具体的には、その言葉がなにを意味するのか明確化することです。
政治家言葉をわかりやすく
たとえば、「前向き」とはなにを基準にして判断するのか、「対応を協議する」とは具体的になにを話し合うのか明確にしなければいけません。
「サンプラザは再整備して守ります」という内容であれば、「サンプラザを解体して整備します。その結論は1ヶ月以内に出します」などと、具体的な日時をいれたらわかりやすくなります。
また、「サンプラザ解体について対応を協議しボトムアップ型で伝えます」であれば、「サンプラザ解体の協議と区民参加のミーティングを1ヶ月に開催します」などと、明確化すればわかりやすくなるでしょう。
さて、7月21日は参議院選挙の投票日です。選挙は、投票行動だけではなく社会や政治へ参加するよい機会になります。全国的に天気予報は雨ですが、お出かけ前でも、後でも投票に行きましょう。投票は午後8時までです。
尾藤 克之(コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)
14冊目となる著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を上梓しました。