公明党の議席確保と自民党支持者の動向

八幡 和郎

いよいよ参議院選挙の投票日である。自分の支持政党に投票するのが基本であることはいうまでもないが、セカンドチョイスの他党の当落線上の候補に投票したほうが意味があることもある。自分の支持する政党でないが、選挙後の政局をにらむと、その政党が衰退すると、枠組み構築が難しくなるということも多い。そのあたりは、すでに何日か前に、「参院選:日本にとって望ましい選挙結果はこうだ」で書いた。今回はもう少し具体的に書きたい。

山口那津男・公明党代表ツイッターより:編集部

私が最後の段階で気にしているのは、公明党が地方区で少し取りこぼしするのでないかということだ。埼玉、神奈川、愛知、兵庫あたり不安なところだ。これらの選挙区では自民党候補は安泰と言われるのだから、公明党に少し配慮しないと、自公政権の今後を不安定にさせるのでないかという気がする。

ただし、私としては公明党がもうひとつ振るわないことには理由があるように思える。つまり、自民党に対して良い意味でのブレーキ役を果たしているのは分かるのだが、前向きに一致点を求めるというより、後ろ向きにしぶしぶ妥協するという印象を与えていないかということだ。

憲法の問題にしても、無理はせず野党の理解も慎重に求めて欲しいと自民党に要望するという姿勢にみえるのだが、むしろ、煮え切らないままずるずる推移するより、こういう案なら野党のそれなりの部分も賛成できるのでないかとと提案していいのではないか。

そういう積極的な役割を果たす方が、自民党の支持者や、場合によっては、中道左派の浮動票などを獲得できるのではないかと思うのだ。

複数区で自民党は安泰であるとか、自民党候補がいささか右派色が強すぎて、国民民主党の候補は出馬していないか泡沫、あとは立憲民主党や共産党しかいないという選挙区があって、中道左派というか本物のリベラルな有権者は投票したい候補がいないというケースがかなりあるように思う。

そうした場合に、公明党の候補がいたら投票してもいいとか、公明党の候補がでているが、公明党の役割について次善の選択であることは分かるが、投票に踏み切るにはもの足りないという有権者は多いような気がする。

一方、東京では自民の二人と公明は安泰のようだから、それなら、立憲民主党より維新の候補に投票するのが、候補の好き嫌いにかかわらず保守やリベラルにとってセカンドベストというものだろう。

自民党については、比例区についての世論調査がいつもあまり詳しいものがないのは、世論調査機関の怠惰だと思う。私だってあの候補にはやはり当選して欲しいと思う人は何人かいる。しかし、世論調査が荒っぽすぎて、本当にボーダーラインなのか分からないことがこれまでもあった。今回もそうだ。

野党でいえば国民民主党がそこそこのところで踏みとどまれるかどうか気になるところだ。政権交代してもなんとかやっていけそうな野党陣営の党は国民民主党しかないのは明らかだからだ。

なぜ立憲民主党に躍進されると困ると私が思うかといえば、それは、自民党永久政権と万年野党でおれば満足でなんでも反対の野党第一党の組み合わせという55年体制に戻ってしまうからだ。

しかも立憲民主党には社会党のような筋の通った信念がなく権力と議席そのものが欲しいだけのように見える。昨日書いた、多様性の確保や男女機会均等を主張しておきながら、美人候補を並べてもっとも自分たちの主張とかけはなれた行動をしているなどまったく筋が通らない。

こうしたことは、民主主義の活性化のために好ましくない。反対のための反対の党が野党第一党で、決められない政治が日本を堕落させた55年体制の二の舞だ。

あとは、私自身は、社民党の存続を願っている。あまりにも、不器用だが、西欧的な価値観の革新政党としての純粋性は貴重だし(共産党は西欧的価値間からはずれている。ドイツではいろいろ経緯がある話だが非合法だし、さきごろの欧州議会選挙ではほとんど死滅した)、世界的にあいかわらず主要政治勢力のひとつである社民勢力の最後の砦だ。そういう勢力は小さくとも政界にあったほうがいい。


八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授