盛り上がらない選挙だと思ってたのですが、投票率は48.8%と戦後二番目に低い結果に終わりました。最近の選挙は争点を絞った劇場型の衆議院選挙に注目されることが多くなっています。ところが今回は安倍首相も「考えなかったわけではなかった」と漏らした衆参同日選が見送られたこともあり、余計に盛り上がらなかったのでしょう。ただ、仮に安倍首相が衆議院を解散していたとしても盛り上がらなかったはずです。理由は争点がなさ過ぎるのです。
事前に言われていた争点は年金、消費税、憲法とされます。まず、年金問題は具体的には例の2000万円のことを指すのだろうと思います。選挙前にはメディアで相当高齢の方が細々と店を経営しているところを取材、「こうやって働かないと明日の生活に困るから」というのをしみじみと感じさせる報道をしていかに年金の仕組みが悪いかというニュアンスを強調しているようでした。
他の番組でも政府は老後の生活を面倒見てくれない、というボイスを取り上げているものもあったのですが、一般サラリーマンからすれば「冗談じゃない、我々は1円単位で決めれられた額を召し上げられている」と反論があってもよさそうでした。正直、あの2000万円の話は一時的に話題にはなったものの誰のボイスなのか、よくわからないところもあるし、それを野党とメディアが嬉しそうに取り上げているというふうにしか見えませんでした。
消費税ですが、これについては与野党関係なく、いつもの通り、断固反対とやむを得ないという人に分かれています。ただ、今回の消費税は2度延期して3度目の正直であります。「二度あることは三度ある」では「世界のABE」の信用がガタ落ちになります。「経済のABEではなかったのか?」とアメリカの新聞あたりは書き立てるでしょう。今の経済の状態ならやむを得ないでしょう。ただ、以前にも指摘しましたが日本は消費税には向かない国なので打ち止め宣言と何か違う形の税をそろそろ考えるべきでしょう。
最後に憲法ですが、あくまでもタイミングだけを考えればこれは争点にするにはまだ早いし、あまり表立ってその動きはなかったとみています。私の予想は安倍首相の任期である21年9月まで間に日本が本当に憲法改正をしなくてはいけない機運をつくるのではないかとおもいます。つまり、憲法改正ありきではなく、日本が今の憲法ではまずいという高揚感を持つようなタイミングを待って解散総選挙に打って出るとみています。それはオリンピックあとになるでしょうから20年秋以降ではないかとみています。
こう見るとやはり今回は争点らしき争点がなかったと言わざるを得ません。参議院の3年に一度の定例選挙ですからどちらかといえば与党の信認を問う中間試験のような位置づけだったとみています。
よって個人的には結果は「まぁ、こんなもの」という程度の反応しか感じませんでした。
ところで野党ですが、なんとなく立憲に票が流れた気がしますが、野党の消去法だったのではないかと思います。そんな中で「れいわ新選組」が話題になったようです。消費税反対、時給1500円という分かりやすさということですが、代表の山本太郎という名前の方が分かりやすいことがあったのではないか、と勘繰ってしまいます。世の中には常に相反するグループがいる中で野党がどこに向かっているのかわかりにくく、そこにうまく入り込んだということでしょう。
ならば与党、自民党も胡坐をかいていてはいけません。安倍首相の任期後、似たような中道右派の政党が新たに生まれないとも限らないでしょう。安倍首相が強すぎるが故にむしろ、そのあとのことの方が心配になった今回の選挙でありました。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年7月22日の記事より転載させていただきました。