日本のエンタメ業界が変わるとき

私の高校の同級生は某テレビ局で部長を務めており、1年に一度は会う仲です。その彼と4月に会った際、「この業界、先行き不安だよ。誰もやりたがらない」と。はじめ何を言っているのかわかりませんでした。我々が就職活動をしていた頃、テレビ局入社は至難の業だったのですから。

彼曰く、制作会社の苦労は想像以上で予算と斬新さを要求されてかなり厳しい状況にあり、現代の若者に夢や希望を与えるような職場ではない、というのです。最前線にいる男がそういうのですからそうなのでしょう。結果として安いお笑い芸人を使い、とりあえずテレビのコマは埋めるけれど、その間にテレビ離れに拍車がかかるということでしょうか?悪循環そのものであります。

吉本興業の社長記者会見が話題になりました。大手新聞の評は一言、「ぼろくそ」。ここまでこき下ろされた社長会見も少ないと思いますが、皆さん5時間越えのこのインタビュー、ご覧になったのでしょうか?では宮迫氏と田村氏の会見が比較論でよかったのか、といえば私にはよくわかりません。

宮迫氏の演技ではないかと思わせるほどの表情やしゃべり方はお笑い芸人ではなく俳優としての本領発揮だったのではないでしょうか?

記者会見する吉本興業の岡本昭彦社長(NHKニュースより:編集部)

記者会見する吉本興業の岡本昭彦社長(NHKニュースより:編集部)

細かい内容はその道のプロにお任せしますが、会社側は極めて安い報酬で働かせているのではないか、という質問に対して5分5分だと反論していました。どこをどう計算したらそうなるのでしょうか?勝手な想像ですが、売れない芸人の場合にはタダのような金額でとにかく出演させてもらう、ぐらいの感覚で使っていたとすればテレビ局や主催者側からの報酬は本当に少なかったのかもしれません。あるいは売れる芸人と売れない芸人のセット料金などもありそうです。

この世界は多分に体育会系の上意下達組織体となっていたと思っています。岡本社長も体育会系そのものと言われています。そのベースは「焼肉食わせるからさー」であとは何でもガッツだけで乗り越えさせるところでしょうか?そしてそれはどこのプロダクション会社でも似たり寄ったりだろうと思います。数日前にレースクィーンの報酬が一日2000円という報道もありましたし、韓国のエンタメ業界も全く同じ無茶ぶりだと理解しています。

あまりコメントがあったようには思えなかったのが例の闇営業の謝礼の配分で宮迫氏100万、田村氏50万円であとはほとんど3万円ぐらいだった点についてであります。誰が配分したのか知りませんが、結局闇営業でも上の者がほとんど分捕るという仕組みに於いて宮迫氏も全く同じ釜の飯を食い、同じような常識観を少なくとも5年前には持っていたということになりませんか?ここが私にとって宮迫氏に全く同情しない点であります。

昨日、このブログでネットフリックスの話題を振りました。結局、有償という壁があるのでしょうか?なぜ、一回分の外食代にも満たない金額ですら払いたくないのか、といえば無料で見られる暇つぶしがたくさんあるから、ということになります。YouTuber達は「へぇー」、あるいは「凄い」と思わせるビデオをアップし、広告で稼ぎ、視聴者は無料で楽しめるというスタイルが定着しつつあります。

一方、テレビはどう考えても安い製作費で「もがく」というのがありありと見えます。制作に比較的手がかからないスポーツ放送やニュース、ワイドショーばかりになり、制作ものでもコマーシャルのオンパレードで一つの話題をこれでもか、と言うほど引き延ばし戦略に走ります。

一つには民放もNHKも同じような土俵で戦うからなのでしょう。いつも思うのはなぜ、どの番組も同じ時間帯に同じような番組をぶつけるのか、金曜日のゴールデンタイムや土日の昼はなぜこれほど番組内容が乏しいのでしょうか?見る人が少ない、と答えが来るのは分かっているのですが、ではみたくなる番組を提供しようという心構えはないのでしょうか?

結局、冒頭の制作会社頼みのテレビ局という姿勢そのものにあるのではないでしょうか?お笑いもジャニーズも、そしてちょっと古いですがAKBもしかり。結局テレビ局は自分で何かしようという気がなくて広告主のご機嫌を取り、予算第一主義になってしまったのかもしれません。

エンタメ業界は変わるかもしれません。それがテレビ番組にどう影響するのか、じっくり考える時が来たように思えます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年7月24日の記事より転載させていただきました。