メガバンクより銀行として「真っ当な」広島市信用組合

銀行業の斜陽化が、日本国内で鮮明になっています。メガバンクや地銀は利ザヤの縮小から、収益力維持のために投資信託や保険などの、本業の融資業務とは別の手数料ビジネスに走りはじめました。

写真はブルームバーグから

そんな中、広島市信用組合という凄い金融機関が広島にあることをブルームバーグのこの記事で知りました。地元では「シシンヨー」の名で親しまれているそうです。

何が凄いかというと、この金融環境下で2018年度に過去最高益を達成。しかも、利益水準だけではなく、経営姿勢がありがちな金融機関経営とは一線を画しています。

広島市信用組合は、投資信託や生命保険などの金融商品は一切販売していないそうです。そして、預金の運用にも、外債や株式の組み入れは基本的に行わないで経営を続けています。

それでどうやって利益を上げるかというと、融資業務です。貸出金残高が5624億円で、預貸率は87%。預かったお金の9割近くを貸し出しによって運用する。本業の融資事業をしっかり基盤に据えて利益を上げているのです。

リスク管理も基本に忠実で徹底しています。貸し倒れリスクを分散するため、10億円以上は融資しない。大口の融資に頼って楽をしようとしないのです。その代わり、約定金利は地銀平均と比べ1.5%高く、しっかり利ザヤを確保しています。

そして、もし不良債権になったら、待ち続けるのではなく、早く売却して損を出し、次の融資先に振り向ける。銀行業の基本を徹底しています。

その経営はトップの山本理事長(写真)の力が大きいようです。73歳と決してお若くはありませんが、毎朝の出勤は何と朝5時前!早朝から書類を徹底的に読み込んで、毎日6時45分からの役員会議に臨むという勤勉さです。

その結果、融資は支店が稟議(りんぎ)を上げてから、3日以内に実行できると言われています。

「赤字、繰り欠、債務超過でも、社長が一生懸命やっているか、企業に成長性があるか、技術力があるか。それを見抜くために毎日歩けよ、融資のプロになれ」と融資担当者に繰り返し教え込む。企業にとっては頼もしい金融機関です。

多くの金融機関が、取引先から手数料を取ることばかり考えています。融資の金利競争が起こってしまうのは、どこから借りても同じだからです。地方の信金には、貸し出し先が見つからず、預金をREITや外債で運用しているところも多いと聞きます。これは、銀行ではなく、運用会社の仕事です。

資金を必要とする企業に、必要なタイミングにお金を融通するのが銀行のあるべき姿です。そんな当たり前を愚直に徹底する広島市信用組合。経営に苦しむ銀行がお手本にすべきは、こんな金融機関ではないでしょうか?

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年7月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。