北朝鮮系の歌劇団員なのに韓国籍?覚せい剤事件で注目

アゴラ編集部

朝鮮総連系の芸術団体「金剛山歌劇団」(東京都小平市)に所属する女優が、渋谷区内の知人の自営業の男の自宅で覚せい剤を所持していたとして、覚せい剤取締法違反(共同所持)の疑いで、警視庁に現行犯逮捕されたことが26日、明らかになった。同時に、北朝鮮系の団体に所属している女優が韓国籍だったことも報道され、ネットで注目を集めている。

Facebookより

産経新聞によると、逮捕されたのは韓国籍の女優、安聖愛容疑者(24)(小平市)。歌劇団の公演では主役を務めていたという。男が覚せい剤事件の関係先として浮上し、家宅捜索した際に安容疑者も自宅におり、身柄を拘束された。

男は容疑を認めているが、安容疑者は「男のものだ」と否認しているという。ただ、尿鑑定では覚せい剤の陽性反応が出ているようだ。

安容疑者のアカウントとみられるFacebookによると、東京朝鮮中高級学校(東京都北区)を卒業しており、こうした経歴からも北朝鮮系の在日コリアンだったと見られる。

ところが警視庁が報道各社に発表した内容では、国籍は韓国籍になっていた。これについてツイッターでは、

北朝鮮の金剛山歌劇団で、「韓国籍の」女優が覚醒剤所持で捕まるってどう言う現象?

朝鮮総連の関連団体なのに韓国籍?これKCIAにお任せするといい案件?

などの疑問が噴出していた。

確かに、北朝鮮系の在日コリアンが韓国籍というのには奇異な印象を持たれそうだが、これは日本の行政制度による事情によるものだ。以前、在日コリアンの有名俳優が事件を起こして逮捕された際に掲載した「朝鮮籍と韓国籍の違いとは?」でも解説したが、日本の行政が取り扱う国籍には「北朝鮮籍」は存在しない。もともと終戦直後の南北分断前の時点にできた「朝鮮籍」があり、当時日本にいたコリアンには全て与えられた。

その後、大韓民国ができてから「韓国籍」を設置したが、在日コリアン3世の投資家、H.S. Kim氏のツイッターによると、「朝鮮籍のままの在日は国籍がなくパスポートを取れず海外旅行できないので韓国籍を取るか帰化する者が多い」という。こうした状況から、北朝鮮系コリアンの安容疑者も本人か家庭であらかじめ韓国籍を取得していた可能性はある。

「韓国籍」「朝鮮籍」の制度のあらましを振り返ると、ここでも、戦後から続く我が国と半島との複雑な歴史を想起させる。