EU離脱案を何度も否決されたメイ首相が辞任し、ボリス・ジョンソン前外相が7月23日に与党・保守党党首に選出され、翌7月24日に第77代イギリス首相に就任しました。このジョンソン氏は元ロンドン市長を経て庶民院議員、外相。英連邦大臣を務めていました。ロンドン市長時代にバラク・オバマアメリカ大統領(当時)に対して「ケニア人の血を引いているから、大英帝国が先祖代々嫌いなのだろう」と発言して非難の集中砲火を浴びたり、他にも言動がしばしば物議を醸した人物です。
皆さん、誰かを連想しませんか?
そう、言わずと知れたアメリカのトランプ大統領です。
トランプ大統領は早速「おめでとう、うまくやれそうだ」と祝意を述べています。
さて、まさに首相交代劇の理由だったように、ジョンソン首相が何よりも関心を持ち、そして世界が注目するのは、イギリスのEU(ヨーロッパ連合)離脱です。これ本当に大きな問題なので過去にもブログでお伝えしてきました。
※過去記事「イギリスEU離脱:世界経済にはバランスが大事です!」
ジョンソン首相は首相就任前から、「合意なき離脱も辞さず」と発言しており、首相就任後も「10月末までに必ず離脱する」と言っています。EUに対してはイギリスが有利になるように再交渉を求めていますが、それが叶わなければ合意なき離脱をするとの事です。そして「合意なき離脱をする」ということを脅しの材料にして再交渉をEUに求めています。これまでイギリスはEUの一員でしたから人の移動も自由だったし、例えば関税もEU域内一緒の税率でした。しかし、それが「合意なき離脱」になればルールがなくなります。そうなるとこれは世界中が引きずり込まれパニックに陥るかもしれません。
ユンケル欧州委員長はジョンソン首相と電話会談で「メイ首相との間で取りまとめた合意案は見直さない。」と再交渉には応じない姿勢を示しました。仮にイギリスとの再交渉に応じれば「他の国も俺たちの好きな条件でEUから離脱させてくれ」となってしまいます。
ジョンソン首相は合意なき離脱の準備のために、6人の主要閣僚で「戦時内閣」チームを設置しました。その責任者に就任したゴーブ国務大臣は「合意なき離脱はいまや非常に現実的な見通しであり、備えを確実にしなければならない」と指摘。「合意なき離脱への備えは現政権の最優先事項だ」と発言しました。「戦時内閣」チームは、ゴーブ国務大臣・ジャビド財務相、ラーブ外相、バークレイEU離脱担当相、コックス法務長官で構成されていますが、いずれもEU離脱派です。このチームで合意なき離脱時の緊急予算の編成していくそうです。
「EUとの戦争」ということなのか「自分たちが引き金になって世界が大混乱したときの為」の「戦時内閣」チームなのかわかりませんが、イギリス国内にはEU離脱反対派もいますし、離脱はいいけれども合意なき離脱反対派もいますから、どうなるのでしょうか。EUは再交渉に応じないと言っていますのでチキンレースの様相です。
皆さんにお伝えしておきます。
本当に合意なき離脱になったら、世界経済が音を立てて崩壊する可能性ありますよ。
まずは合意なき離脱にならないように、仮に万が一、合意なき離脱になっても経済が悪くないように祈るばかりです。
※EUについての解説は【知っトク解説】今回は”EU ”をご覧ください
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年8月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。