郵政関係者が保険の不当契約についてノルマが厳しいせいだといっているのは本当に腹が立つ。
こんどのケースは、上手に勧めて必要を超える契約を結ばせたというような生ぬるいことではない。それくらいだったら、良心的とは思わぬが、ビジネスでよくあることだ。しかし、今回のは、むしろ、不良品と知った上で買わせたのに近い。
そんなことをノルマが厳しいからといってするのは人間として失格だ。場合によっては犯罪だ。タクシーの運転手が、ノルマがきついから少々乱暴な運転をしたとか、短距離の客に嫌な顔をするといった程度でなく当て逃げやひき逃げしたいなものだ。
しかし、それ以上に残念なのは、郵政関係者のなかに、あたかも容認するようなことをいったり、ノルマがきついので今回のような言語道断の保険契約が横行する、民営化が悪い、小泉や竹中が悪いとか弁解することだ。
これでは、郵政ムラが最低限のモラルも持たない反社会的存在だと言うことになってしまう。そういうことでないと信じたいし、私は郵政民営化には賛成でも反対でもなかったが、いっときだけかもしれないが、もっと根本的な改革が必要だったのではというか、小泉氏や竹中氏の言葉に共感を覚えるようになったほどだ。
郵政民営化は基本的には郵貯の問題だったので郵便事業の扱いには直結しないと思うが、民営化反対論は郵便事業に携わる職員の士気の高さをやサービスの質を引き合いに出して反対する人も多かった。
確かに、郵便事業に携わる職員が公務員全般と比して強く批判されるべき存在だったとは思えなかった。
しかし、同時に、私が1980年にフランスに留学して、日本の郵政と比べてフランス郵政公社(PTT)のサービスや職員のの質が高いことや、その確実性に感銘したのを思い出す。郵便でも小包でも何日で着くかは明示され、狂いもなかったし、パリ市内だと真空のパイプを使って超特急で送るサービスなどもあった。
八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授