Nagasakiと表現の自由:朝日は米ドラマを批判できるのか

山田 肇

米国ドラマの中で「Nagasaki」が「破壊する」という意味の動詞として使われたと問題になっている。8月7日に西日本新聞が報じ朝日新聞も9日に「被爆74年を迎える長崎では憤りや疑問の声があがった」と記事に書いた。

朝日新聞の題字、作中のセリフが論議を呼んでいる米ドラマ「THIS IS US(ディス・イズ・アス)」のDVD(朝日新聞サイト、Amazonサイトより:編集部)

不適切な表現であると僕も思うが、朝日新聞は批判できるのだろうか。

6日の社説「あいち企画展 中止招いた社会の病理」で、朝日新聞は「人々が意見をぶつけ合い、社会をより良いものにしていく。その営みを根底で支える「表現の自由」が大きく傷つけられた。深刻な事態である」と主張している。朝日新聞は「表現の自由を抑圧するような動きには異を唱え続ける」そうだ。

憲法で表現の自由は保障されているが、同じ憲法には第12条〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕があり、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と定められている。

朝日新聞の社説にはこの公共福祉性への言及がない。きっと考えていないのだろう。しかし、慰安婦に関する表現は守られ、被爆者に関する表現は許されない、というのは二重基準である。

オックスフォード大学が実施したメディアの信頼度調査で、朝日新聞はNHK、日経、地方紙などより信頼度が低いとの結果が出ている。いや、それどころではない。産経新聞、フジテレビ、毎日新聞よりも朝日新聞は下なのだ。

表現の自由は徹底的に守るべき、と朝日新聞が思うなら紙面全体をそれに合わせて編集するのがよい。首尾一貫しないとますます信頼を失うだろう。

山田 肇