朝日新聞英語版上に誤報の疑い
朝日新聞は「表現の不自由展」中止に関する報道で、英語版ウェブサイト上に、一部事実誤認を含む記事を掲載している。朝日新聞には、当該記事の速やかな訂正と、国際的な周知徹底をお願いしたい。
問題の記事
問題の記事は8月8日から朝日新聞英語版ウェブサイト “The Asahi Shimbun” 上で公開されている。記事の表題は “Citizens, scholars demand free expression show be reopened” である。
問題の一文を抜粋すると、
After he saw the exhibition, Nagoya Mayor Takashi Kawamura urged Omura on Aug. 2 to remove a statue representing “comfort women” who were forced to provide sex to wartime Japanese troops.(太字は筆者)
何が問題か
“be forced to~” は、日本語にするならば「~(すること)を強制される」あたりが妥当だろう。しかし、事実として政府が強制した証拠は見つかっていない上、その報じ方が誤りであることは、朝日新聞も2014年に訂正し謝罪したはずだ。
今日改めて誤りである記述を英語版で再掲しているのは一体どのような意図があるのだろうか。
報道されている事柄
同記事に対応する紙面及び日本語版記事では、筆者が確認した限り、「“comfort women” who were forced to provide sex to wartime Japanese troops」に対応した表記は確認できない。
また、河村たかし名古屋市長が大村秀章愛知県知事に提出した抗議文を確認すると、当該英語表記部分に相当する句は「慰安婦問題などに関する」という表現になっており、意訳の範疇を越えた極めて不正確な翻訳記事になっている。
ニューヨークタイムズと提携している朝日新聞
ニューヨークタイムズ東京支社の住所は、東京都中央区築地5丁目3-2である。これは朝日新聞東京本社である。朝日新聞とニューヨークタイムズは、業務面でも強い協力関係にあり論調も類似する傾向がある。
日本ローカルの新聞社のサイトは世界の人にはあまり見られないだろうが、ニューヨークタイムズ紙が取り上げた場合は世界中の英語圏に配信される。そのため、今回のような事実と異なる報道が英語で発信されると、多くの日本人にとっては大いに迷惑である。
朝日新聞は不名誉な誤報を訂正せよ
2014年の朝日新聞の誤報訂正と謝罪の後、第三者委員会が開かれたが世界への影響は限定的だという趣旨の判定をしていた。その評価は人により異なるだろうが、筆者は影響が大きいと感じるものである。
次世代の日本と日本人に対して、今この類の誤報を看過することは、我々大人世代の責任を果たさないことになると考える。朝日新聞には重ねて訂正をお願いする。
田村 和広 算数数学の個別指導塾「アルファ算数教室」主宰
1968年生まれ。1992年東京大学卒。証券会社勤務の後、上場企業広報部長、CFOを経て独立。