ALS患者の気持ちを知りたい方は、口文字か文字盤で1日過ごしてみてください。5分持たない筈です。当たり前です。あなたの周りには口文字や文字盤を読める人がいないからです。
これで、特殊なスキルを習得したヘルパーさんの必要性及び、そのヘルパーさんが介助に入る為の、重度訪問介護の時間数の必要性もわかって頂けると思います。
では、あなたの周りにヘルパーさんが居るとして、口文字か文字盤を再開しましょう。実際にはヘルパーさんはいないので、10秒に一文字だけ伝えられるルールとします。口文字初心者なら、このくらいのスピードです。
私は恩田聖敬です
→わたしはおんださとしです
12文字なので120秒、つまり2分です。名前を伝えるだけで2分かかるのです。また、自分の言いたい文章を頭の中で一文字ずつにに分解して相手に伝えることは、想像以上に難しいことです。これが私の住んでいる世界です。
あなたは30分も持たずに根を上げて喋り始めるでしょう。でも私は、根を上げたらコミュニケーション出来ないのです。この世界で生きるしかないのです。
だから我々ALS患者は、少しでもコミュニケーションスピードを上げる為に、介助者と日夜懸命に努力しています。口を開けば声が出る人には到底わからない世界です。私自身も、ALSになるまでこんな世界があるとは、夢にも思っていませんでした。
全国の市町村の首長にお願いです。全国の障害福祉課にこの研修を取り入れてください。そうすれば、原因不明の病で理不尽に声を奪われた、障害者への対応が少しは変わるでしょう。
恩田 聖敬
この記事は、株式会社まんまる笑店代表取締役社長、恩田聖敬氏(岐阜フットボールクラブ前社長)のブログ「片道切符社長のその後の目的地は? 」2019年8月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。