「老後破産」しないために必要な3つのこと(追記あり)

「老後破産: ―長寿という悪夢―」を読みました。シニアになって貧困に苦しむ人たちの壮絶な姿がレポートされています。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

読んでいて重苦しいと感じたのには、2つの理由があります。

まず、この問題は一度自分が貧困に陥ってしまうと、もはや自力では抜け出す方法が見つからないということ。そして、もう1つは現役時代は真面目に働いてきた普通の人がひょんなきっかけから「老後破産」になってしまうということにあります。

「老後破産」とは特別な人たちの問題ではなく、私を含め誰にでも遭遇する可能性のある問題だということです。

では、そうならないためにはどうしたら良いのでしょうか。私が思ったことは次の3つです。

1.健康に気を付ける
経済的にギリギリの生活をしていると、体を壊してしまうことをきっかけに、生活が成り立たなくなるのです。月に10万円程度の年金生活であっても、健康であれば何とかなる。そんなコメントを見つけました。健康こそが「老後破産」しないための大きな要因であることがわかります。

2.現役時代の生活水準を維持しようと思わない
レポートされている人の多くは、現役時代には仕事をしっかりこなし、真面目に働いていたことに驚きます。しかし、収入が減ってしまっても、現役時代と同じ生活を維持しようとすれば、経済的には成り立ちません。若いころに贅沢な生活をしていた人ほど、老後破産のリスクが高いと言えるのです。

3.年金以外の定期収入を確保する
年金制度だけで老後の生活が成り立つ人は、今やほんの一部の恵まれた人たちだけです。多くの人は年金以外の収入を確保しなければ、毎月のキャッシュフローをプラスにすることができません。預金を持っていても、無くなるのが怖くて手を付けないで節約しているケースが紹介されていました。ストック資産を取り崩す老後の資産設計は、現実には成り立たないのです。

老後破産するくらいなら、生活保護を受ければ良いと思うかもしれません。しかし、例えば、自宅を保有している人やある程度の預金を持っている人は、自宅を売却したり預金を使い果たさなければ生活保護を受けられない制度になっています。(※追記訂正あり)

愛着のある自宅に住み続けたい人や、預金がなくなる恐怖に怯えている人は、生活保護が受けられないのです。

また、生活保護を受けることに対し、日本人には根強いアレルギーがあるとも指摘されています。

これから、シニアに占める非正規雇用者の割合が上昇し、お一人様が増えると、状況はさらに深刻になっていきます。老後の貧困問題は、個人の自助努力だけでは解決できない、社会全体の問題として取り組んでいかなければならないと感じました。

【※追記 17:30】生活保護を受ける条件に関して、預金の保有は特に厳しいが、他の資産は個別に保有が認められることもある、というご指摘がありました。追記して訂正いたします。

■ 毎週金曜日夕方に配信している無料のメールマガジン「資産デザイン研究所メール」。メールアドレスとお名前を登録するだけで、お金の不安を解消するための具体的な方法をご紹介します。

■ 「初めての人のための99%成功する不動産投資」、シリーズ累計19万部となった「初めての人のための資産運用ガイド」など、今までに出版された書籍の一覧はこちらから。

※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年8月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

アバター画像
資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。