国際トライアスロン連合(ITU)は17日、パラトライアスロン国際大会の水泳会場となる東京・お台場の海の水質検査の結果が「腸菌のレベルが基準値を大幅に越えた」として、3種目のうち水泳を中止し、自転車ロードレースと長距離走のみのデュアスロンに変更した。
デュアスロンに変更
【ITUパラトライアスロンワールドカップ(東京/2019) 】
大会実行委員会・ITU・東京2020オリンピック・パラリンピック大会組織委員会・競技にかかわる3名の技術代表及びメディカル代表が午前3時に危機管理会議を実施し、競技変更の決定をしました。詳細: https://t.co/ES1bEoAx5E— 日本トライアスロン連合(JTU) (@Japan_Triathlon) August 16, 2019
大会は2020年東京オリンピック・パラリンピックのトライアスロン競技の会場で、テストマッチの位置付けだった。本番まで1年のタイミングでよもやの中止ともいえるが、11日に同じ会場で開催された東京五輪・パラリンピック組織委員会主催の水泳オープンウオーター(OWS)のテスト大会でも選手たちから「トイレみたいな臭いがする」などと苦情が続出していた。
・水泳オープンウオーター選手悲鳴!お台場は悪臭と猛暑Wパンチ「トイレみたいな臭い」― スポニチ
・未浄化下水広がる“肥溜めトライアスロン”に選手は戦々恐々(日刊ゲンダイDIGITAL)
ツイッターでは今回の水泳競技中止という事態に「汚すぎ」「予想通りヒドイ五輪になりそう」などの声が上がっている。ネット民が取りざたしている大きな理由としては、お台場の海については、会場近くでは東京都下水道局が下水を放流し、水質についてはかなり以前から懸念されていたためだ。
日刊ゲンダイでも紹介されているが、芝浦・台場周辺の水質汚染については地元・港区議会でも5年前の取り上げられている。当時で議会で質問した榎本茂区議は、競技会中止の2日前の15日に自らのFacebookで日刊ゲンダイの記事をシェアしながら、
お台場の臭気の原因は、海底の汚泥(ヘドロ)から発生するメタンガスと硫化水素によるもの。
汚泥(ヘドロ)が堆積する原因は、下水処理場が生活排水を浄化処理しないで塩素を混ぜただけで放流する「簡易処理水」に含まれる有機物質が沈殿するから。つまり、トイレや台所からでた有機質。
この問題は、お台場だけでなく、東京港全体、そして下水が流入する河川でも同じだ。
などと指摘。また、水泳オープンウオーター(OWS)のテスト大会の問題が起きた時点で、環境問題などを扱うネットメディア「オルタナ」編集長の森摂氏もツイッターで、「東京23区は下水路と雨水路を分けていないので、特に大雨の時には湾に糞尿が流れ込む仕組み。上から見ても明らかに黄色っぽい水の帯が漂っているのが分かります。お台場の浜で子どもを海に入れている家族連れもいますが、絶対お勧めしません。」とコメントした。
東京23区は下水路と雨水路を分けていないので、特に大雨の時には湾に糞尿が流れ込む仕組み。上から見ても明らかに黄色っぽい水の帯が漂っているのが分かります。お台場の浜で子どもを海に入れている家族連れもいますが、絶対お勧めしません。 https://t.co/DxYYk7xYEJ
— オルタナ編集長・森 摂 (@setsumori) August 11, 2019
森氏のツイートに対し、小池都政の特別顧問を昨年3月まで務めた上山信一氏は「残念ながら事実」と述べた上で、「昔の下水道はどこもこの方式。設備を改修するには水路の再構築など莫大なお金がかかる」とインフラ面の難しさを指摘した。
残念ながら以下は事実。しかし昔の下水道はどこもこの方式。設備を改修するには水路の再構築など莫大なお金がかかる。 https://t.co/oqEusXpXjG
— 上山信一 (@ShinichiUeyama) August 16, 2019
東京都と大会組織委も2017年10月の時点で、同年7〜9月に行った水質調査で、ITU基準値の最大約21倍の大腸菌が検出されたことを明らかにしている。
東京五輪トライアスロン会場で基準超の大腸菌検出 お台場海浜公園 (サンスポ)
東京都も手をこまねいているわけではなく、大腸菌の流入をさえぎる水中スクリーンを活用している。ただ皮肉なことに、昨年8月、その「作戦」に乗り出した際にフジテレビが取材・報道した記事がネット民に注目されている。
「水質改善」大作戦!お台場で巨大水中スクリーン実験始まる【2020東京五輪】 – FNNプライムオンライン
会場の海の水質は、普段は基準値内に収まっているものの、大雨の時などに一変することをこの記事がわかりやすく伝えているのだ。
東京23区の下水道の多くは汚水と雨水を一緒に処理しているため大雨が降ったり長雨になり下水道の処理能力を超すと、汚水と雨水が混ざった下水は処理されないまま海や川に流されている。
ここ数日、同記事が再び読まれ始め、ネット民の間では
東京都が水中スクリーン工事を急ピッチで始めてるけど、正直その場しのぎだろうね。
これも金の無駄遣いで終わったのかぁ…
お台場クッサイ時あったけれどほんとに臭かったのか。上物に金掛けるだけでなくこうしたインフラ整備にも対応しないと都市機能としては死んでしまう。
お台場の海で泳ぐ選手達がホントに心配です、二年前に敷設したスクリーンの他に機械浄水とかできないのかな?
などといった反応が見られた。
オリンピック・パラリンピック本番に向けて生じた新たなピンチ。開催都市のトップとして対応が注目される小池知事だが、お盆休みの今週は定例記者会見はなし。パラトライアスロン国際大会の水泳種目が中止となった17日は、大井ホッケー競技場の完成披露式典に出席して始球式に臨んだが(参照:NHKニュース)、この夕方までの報道では、この問題での発言は伝えられていない。
都民ファーストを掲げてきた小池都政だが、選手ファーストの大会運営ができるのだろうか。