こんにちは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。
水道民営化のパブリックコメントが昨日締め切りだったらしく、Twitter上で「水道民営化反対!」の大キャンペーンが貼られていたようです。
どうやら反対キャンペーンの旗を振った方がおられるようで、内容としてはいつも通り
・民営化すれば、民間企業の食い物にされて料金が上がる!
・世界ではすべて民営化が失敗している!
・外資に水を売り払う、麻生財務大臣(と安倍首相)の陰謀だ!
というのが主だったものでした。
こうした水道民営化に対するステレオタイプな誤解、あるいは意図的な曲解に対する反論については、いわゆる水道民営化法案が通った時にブログに書いた通りです。
参考過去記事:
水道民営化(水道法改正)が、国会議員たちのポジショントークになっている件(2018年12月)
一番大事な部分だけ繰り返しますと、水道の『一部』民営化(運営権のみ売却)は水道料金を値上げするためではなく、むしろ値上げしないため(値上げ幅を少なくするため)に行うものだと言うことです。
人口減少社会と水道インフラの老朽化に直面して、ほとんどの自治体において水道事業は苦しい運営を強いられています。
そりゃあなんでもかんでも、公営が安心安全で面倒見てくれれば良いかもしれないけど(私はそうは思いませんが)、そういうやり方には限界がきていて、このまま手をこまねいていたら確実に負担が利用者に跳ね返るわけです。
水道事業の運営を民間に渡すのは死んでもイヤで、公営を維持するためだったら料金が倍になっても文句は言わない!
という主張であれば、それはそれで一貫性があると思うのですが、あたかも「水道民営化=料金があがる、公営のまま=料金は上がらない」のような主張は明確なミスリードです。
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実際、こんなロジックをちらほらとSNS上で見かけました。
高校生が明確な意思を持って政治に提言する、素晴らしいことです。発信主体が高校生ということもあって、おおいにこちらの投稿は拡散しているようですが、残念ながら主張の中には誤りと思われる部分がいくつかあります。
例えば意見の中で、浜松市(静岡県)が民営化によって値上げした象徴として挙げられていますが(おそらく下水道料金のことを差している)、これを民営化が原因と断定することは間違いです。
浜松市で確かに「下水道」の一部民営化(コンセッション方式)がすでに実施されておりまして、これによって今のところ大きなコストダウンに成功する見込みとなっています。
参考過去記事:
運営権収入で25億円!浜松市の下水道コンセッション方式、東京都でも実現の余地ありか
浜松市の下水道料金が12.9%値上げされたのは2017年10月で、コンセッション方式の正式導入が2018年4月ですから、これは因果関係が完全に逆。
むしろ下水道の一部民営化は、さらなる下水道料金値上げを防ぐために導入された施策です。
実際に近隣の自治体(豊橋市など)でも下水道料金の値上げが続いており、人口減少・インフラ老朽化の流れの中で何もしなければこの流れは止まりません。
この成功例を足がかりに、浜松市長は水道事業のコンセッション方式導入にも乗り出していましたが、自民党を含めた議会勢力の反発によって、水道事業の民営化を見送りました。
そして民営化を見送った結果として、浜松市は今度は水道料金の値上げに踏み切らざる得なくなったわけです。
浜松市 水道基本料値上げへ 水道管老朽化交換費用(2019年3月6日 中日新聞)
浜松市の件は引用している方の意図とは逆に、むしろ民営化しないと値上げが起きますよという典型的な事例となります。
こうした事態を防ぐために、法律改正によってスムーズに可能となった広域化をまず検討・実現していき、地域によっては運営権を民間に委ねる選択が取れるようにするということは、市民の生活を守るためにこそむしろ当然に必要なことです。
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何も変えたくない、このまま公設公営のままが良いと言い続けても、各自治体に少子高齢化・過疎化・水道インフラの老朽化は容赦なくやっていきます。
その中で、なんとか利用者負担を抑えようと考え出され、法案が通ったのが水道事業の広域化と一部民営化(運営権の売却、いわゆる公設民営)方式であり、これを麻生財務大臣や安倍首相の陰謀と片付けるのはあまりにも浅はかではないでしょうか。
なお海外事例として、ボリビアなどの極端な失敗例ばかりが強調されますが、英国のように悩みながらも水道事業の民営化に成功している国・地域もあります。
そうした成功・失敗の双方の事例に学びながら、「いかに水道料金をあげずに、水道事業を維持していくか?」を考えるべきであって、民営化=悪と決めつけるのは極めてナンセンスであると思います。
加えて繰り返しになりますが、あくまでいわゆる水道民営化法案は各自治体に強制するものではなく、一部民営化を「選択」できるようにしたもの。
広域化だけで水道事業の維持を解決できる自治体は民営化をする必要はありませんし、こうした手法以外に水道料金をあげずに現在の水道事業を維持できる方法があるというのであれば、私もぜひ学ばせていただきたいと思っています。
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それにしても。
国政における与党である自民党・公明党がPFI(民営化)を進めているのに、地方政治においてはその自民党・公明党が議会で民営化に反対するというねじれ構造、なんとかならないものでしょうか…。
水道事業ではありませんが、大阪市では公園運営にも民間の活力を導入する施策が進んでいます。
人口減少・低成長のこの時代だからこそ、「民間でできることは民間で」をキーワードに、引き続き行政改革を調査・提言して参ります。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会、地域政党あたらしい党代表)のブログ2019年8月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。