ロボットをいかに基督信徒にするか

バチカン日刊紙オッセルヴァトーレ・ロマーノが25日報じたところによると、バチカン市国にある薬局で数日前からロボットが勤務している。仕事の内容は、薬の自動管理と在庫整理などだ。ロボットは薬局内のスペースを節約し、毎年行われる在庫整理が不必要になった、と歓迎する声が聞かれるという。

バチカンの薬局で勤務するロボット社員(2019年8月24日、バチカンニュースから)

ロボットはドイツのケルベルクにある「BD Rowa Technologies」社製で、同社は米国の医療技術供給会社BD社の姉妹会社だ。BD社は薬局や病院での薬や備品管理倉庫を製造している。通称「BD Rowa システム」はバチカンの薬局の仕事内容、店舗販売、倉庫管理を大きく変えるだろうという。自動化とデジタル化は薬を迅速に管理し、薬の倉庫管理を効果的にするというわけだ。バチカン薬局は約4万種類の薬を取り扱っている。

ちなみに、バチカンニュースによると、バチカン薬局には毎日2万人の顧客がくる。社員は60人。同薬局は開業以来145年間、病人看護を担当するバルムヘルツィゲ・ブリューダー修道院(Barmherzige Brueder)が経営している。

同薬局の責任者、インド人のビニシュ・トーマス・ムラクカルさんは新しい社員のロボットについて「 スマートな新社員は時間と場所を節約する。 倉庫では薬を隙間なくビッチリと保管し、必要に応じ、薬を迅速に自動的に取り出す。薬を探す時間はほとんどいらない。倉庫で浮いた空間を別の目的に利用できる」とべた褒めだ。

ロボットの投入で社員の仕事内容が変わる。社員はお客(患者)と時間をかけて話し、アドバイスもできるというわけだ。薬局の主人によると、「お客の待ち時間は約30%短縮できる」という。なお、ロボットの購入価格については、バチカン日刊紙は言及していない。

以上、バチカンニュースのロボット導入の話を紹介した。ここから当方のコラムが始まる。

ロボットはローマ・カトリック教会の総本山バチカンの薬局で働いている。バチカンで働く職員や社員は基本的にはカトリック信者だ。カトリック教徒ではない人がバチカンで仕事を得ることは難しい。

それでは優秀で時間と空間を節約するロボットも遅かれ早かれカトリック信者になるか、少なくともカトリック教理を理解しなければならないだろう。ロボットは果たして神を信じるだろうか、という問いが出てくる。これは決して突飛な質問ではない。軍事関係者は目下、ロボット兵器(軍用ロボット)による戦争シナリオを真剣に考えている。ロボットを敬虔なキリスト者とするか、荒々しい戦士とするかで人類の運命が大きく変わるのだ。その意味で、上記の質問は最も今日的な問いかけといえるのだ。

ロボットは神を信じる前に、神を理解しなければならない。イワシの頭も信心からとはいかない。プログラミングの段階で神についてあらゆる情報、過去のデータを掌握しなければならない。その結果、ロボットは神を信じるようになるだろうか。

ロボットが過去の膨大なデータ、新旧聖書66巻と外典、基本的な神学書、イスラム教のコーランやハディ―ス、ユダヤ教の律法(トーラー)を全て学んだら、少なくとも「信仰の祖」アブラハムから始まった唯一神教としての神の存在を理解できるだろうか。

問題が生じるかもしれない。新旧聖書を読んだロボットは、「旧約聖書は多数の著者が様々な信仰を告白している。統一した神観を見いだせない。新約聖書ではイエスという特殊な人物の言動は理解できても、神の存在の実証証明にはならない。イスラム教のムハンマドの話はメッカとメディナでは全く異なっている。コーランは統合失調症の人物の神観だ」と答えたらどうするのか。

神について言及した聖典を綿密に読破したとしても神を理解できないという答えがロボットから戻ってくるかもしれないのだ。ひょっとしたら、人類は神について多くのことを語り、記述してきたが、神を理解する上で大きな助けとならないのかもしれない。

それでは、バチカンの薬局で働くロボットをキリスト信徒にする試みを諦めるべきか。少し結論が早すぎる。ロボットが「宇宙を観測できるということは、宇宙の背後には人類の理解を超えた秩序と統一を保つ何者かが存在すると推測できる」と答えるかもしれないのだ。ロボットは宗教の聖典では神を発見できなくても、宇宙を観測することで何らかの“第一原因”としての神の存在が推測できると語るかもしれない。秩序と統一、宇宙の観測性からロボットは第一原因としての神を認識できるかもしれないのだ。

神を見失った人類は神を説明する聖典を捨て、天を仰ぐべきかもしれない。神を知るためにはバチカン市国もメッカ巡礼もいらない。ローマ法王も正教総主教もいらない。頭を天に向けるだけでいいのかもしれない。ロボットが将来、人類に「余は如何にしてキリスト者となりしや」(How I became a Christian)というテーマで講義する時が来るかもしれない。

ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年8月27日の記事に一部加筆。