「日韓併合」の法的検証
2018年10月30日の韓国大法院判決は、1910年の「日韓併合」による不法な植民地支配と侵略戦争に直結した日本企業に対する反人道的な不法行為に基づく慰謝料請求権は、1965年の日韓請求権協定には含まれないとの理由で、元徴用工の日本企業に対する損害賠償請求を認めた。したがって、この判決は、1910年の「日韓併合」が違法で無効であることを前提とするから、まず、「日韓併合」の違法性の有無を法的に検証する必要がある。
「日韓併合」の違法性の有無については日韓両国間で根本的な争いがある。日本側は「日韓併合」は国際法上合法有効であると主張し、韓国側は違法無効な植民地支配であると主張して、両国の主張は真っ向から対立している。
韓国側の違法無効の主張を、国際法上証明する事実はない
「日韓併合」とは、1910年に日本と当時の大韓帝国との間で締結された「韓国併合に関する条約」により、日本が大韓帝国を併合したことを指す。韓国側は、日本の伊藤博文が大韓帝国の高宗皇帝を武力を背景として恫喝し、大臣を脅迫して締結したものであるから、「日韓併合条約」は違法無効であると主張している。
しかし、「日韓併合」後100年以上が経過した現在に至るも、韓国側の違法無効の主張を認めるに足りる事実はなく国際法上も証明されていない。周知の通り、「日韓併合」は、日本が一方的に武力で制圧し占領したことによって実現したものではなく、当時の大韓帝国が日本の統治下に入ることを最終的に選択し、条約を締結したことにより合法的に実現したのであり、この日本の主張は下記の通り、国際法上も認められているのである。
欧米の国際法学界は「日韓併合」の違法性を認めない
2001年韓国側の要請で、ハワイ・東京・ハーバード大学で計3回、日韓・米・英・独の国際法学者らが参加して行われた、「韓国併合再検討国際会議」は、「日韓併合」の合法性、違法性をめぐる協議を扱った国際学術会議であるが、韓国側の「違法無効」の主張は、全く支持されず、受け入れられなかった。
アンソニー・キャテイ=英国ダービー大学教授は、「当時は、特定の条約の合法・違法を判断する国際法を発見することは困難であった」と主張し、「日韓併合条約」の違法性を認めなかった。
さらに、国際法の権威であるジェームズ・クロフォード=英国ケンブリッジ大学教授は、「当時の国際慣例法からすると、韓国併合が英米をはじめ列強に認められている以上は、仮に手続きに瑕疵があったとしても無効とは言えない」と指摘した。
このように、米英独の国際法学者らは、「日韓併合不法論」を一切支持せず、韓国側の主張は完全に崩れたのである(2001年11月27日付け産経新聞)。
韓国の歴史学者も「日韓併合」による韓国の近代化を認める
崔基鎬著『歴史再検証・日韓併合の真実』(2007年祥伝社刊)によれば、「日韓併合」時の1910年には韓国の人口は1313万人であったが、32年後の1942年には2553万人で併合時の2倍近くに驚異的に増加している。
この事実は、韓国の中学・高校歴史教科書の「日帝の不法な植民地支配により、政治的弾圧、経済的収奪、文化的抹殺が行われ、奴隷状態に置かれた」という徹底した「反日イデオロギー教育」の内容と明らかに矛盾する。なぜなら、人口は経済的発展なしでは驚異的には増加しないからである。
同書は、「日韓併合」による成果として、「階級制の廃止、公正な裁判、賄賂習慣の一掃、私有財産制度・職業選択・居住の自由など社会経済秩序の確立、鉄道・道路・橋梁などインフラ整備による経済の活性化と発展、教育の普及、医療制度の近代化、疾病予防の確立」などの事実を指摘している。
韓国の学界では、1990年代以降「植民地近代化論」が台頭し、上記のような日本統治時代の肯定的な変化を評価する方向に変わってきた。しかし、その成果はほとんど中学・高校の歴史教科書には反映されず、依然として「日帝の不法な植民地支配下における悪辣で非人道的な収奪」とされている。しかし、さすがに、「日韓併合」により近代化が起きた事実は否定できないため、これらはすべて「不都合な真実」として無視されるか、「収奪史観の原則」に従って、ことごとく否定的に評価されるのである。
韓国大法院判決は、国際法上明白な誤謬であり国際法違反
以上に述べた通り、「日韓併合」は国際法上違法無効なものではなく、明らかに合法有効なものである。したがって、「日韓併合」が違法無効であり不法な植民地支配であることを大前提とした韓国大法院判決は、国際法上明らかな誤謬であり、国際法違反であることは明白である。
加藤 成一(かとう せいいち)元弁護士(弁護士資格保有者)
神戸大学法学部卒業。司法試験及び国家公務員採用上級甲種法律職試験合格。最高裁判所司法研修所司法修習生終了。元日本弁護士連合会代議員。弁護士実務経験30年。ライフワークは外交安全保障研究。