ガムテープで隠す歴史 〜 反日イベントでのコントのような一幕

崔 碩栄

先日、韓国で話題になった映像がある。

日本不買運動の一環として日韓の市民団体が連帯して主催したイベントが開かれたのだが、そこに出演したバンドが日本のブランド「YAMAHA」のドラムセットを使っていたのだ。

もっと面白かったのは、途中で「YAMAHA」のロゴを黒いガムテープで隠す「応急措置」を行ったことだ。横断幕を広げた市民団体がドラムセットの前でスピーチをする間に、横断幕の裏でスタッフがガムテープでロゴを隠していたのだ。

<Before & After>

コントのような話だが、これが先日韓国のソウルで行われた「反日イベント」だ。

私はこれを見て、この4コマ漫画みたいな流れが韓国の歴史叙述に似ていると思った。それは

① Aを持ってBを主張する
② Aに矛盾が見つかり、Bが疑われる
③ Aの内容を少し修正する
④ ①~③には触れず、Bを主張し続ける

という流れだ。まさに上の公演にぴったり当てはまるが、実は似たような話を目撃したことがある。

日本を意識して変わる「証言」

2010年頃だったと思うが、ソウルの繁華街「弘大入口」近くで開かれた公開市民講座に参加したことがある。強制連行、慰安婦問題の専門家として有名なX氏が招聘講師だったので興味があった。一般市民向けの教養講座だったので深い内容はなかった。講演の後、質問応答の時間が回ってきた時、私は次のような質問をぶつけてみた。

慰安婦たちの証言を見ると時期、場所などが明らかに矛盾している内容もある。高齢者の記憶力に限界もあると思うが、検証があまり行われずそのまま事実のように採用されているのではないか?

すると、講師は驚くような話を聞かしてくれた。

矛盾している内容はあります。そしてそれが日本の右翼、否定論者たちから批判を受けています。実は日本からの批判を意識したか、最近証言の内容が変わってきました。代表的なのは、慰安婦たちの出身背景が「貧農出身の少女」から「中産階級」もしくは「そこそこ余裕があった家庭」に変わったことです。これは明らかに日本側の批判を意識したことだと思います。

講師自身はそのような変化に懐疑的だった。しかし殆どのマスコミ、運動家たちは静かに「ガムテープ」を貼って、ドラムを叩き続けている。

私はこれが上で紹介した反日イベントと似ていると思った。矛盾など気にすることなく応急措置で隠せば済むと思っているのだろうか。残念ながらそれが通用するのが今の韓国だ。そして観客(国民)ももうドラムの製造元(真実)など気にしない。観客にはメーカー不明のドラム(修正された話)だけが聞こえているだけだ。

上の公演のように。

Nikkan Watch」2019年8月18日の記事に一部加筆。

崔 碩栄   フリーライター

1972年、韓国ソウル生まれ。高校時代より日本語を勉強し、大学で日本学を専攻。1999年来日し、関東地方の国立大学大学院で教育学修士号を取得。大学院修了後は劇団四季、ガンホー・オンライン・エンターテイメントなど日本の企業で、国際・開発業務に従事する。その後、ノンフィクション・ライターに転身。ツイッター「@Che_SYoung