「友達の紹介」はもう古い!?アメリカ人の恋人との出会い方が激変

安田 佐和子

ミレニアル世代の特徴を表わす言葉として、YOLOやFOMO、ICYMIがございます。YOLO=You Only Live Once(人生一度きり)、FOMO=Fear Of Missing Out(取り残される不安)という意味ですよね。ICYMI=In Case You Missed It(見逃した場合に備えて)は、すっかり市民権を得てホワイトハウスの声明でも見掛けるようになりました。

こうした言葉に代表される彼らの性分にマッチするのか、テクノロジーの進化と重なり恋人の出会い方に劇的な変化が生じているのはご存知でしょうか?

(カバー写真:mompl/Flickr)

スタンフォード大学の調査によれば、アメリカ人の出会い方は1995年時点で「友人の紹介」が33%でトップ、次いで「同僚の紹介」と「バーやレストラン」が19%、「家族の紹介」が15%でした。

しかし、2017年の断トツ1位は「ネット(アプリを含む)」で39%と、1995年の2%から急上昇しています。逆に「友人の紹介」は20%、「同僚の紹介」は11%、「家族の紹介」は7%とそれぞれ低下。「バーやレストラン」のみ1995年当時の水準から27%へ上昇し、ネットでの出会いと合わせ、

まさに「見逃した場合に備えて」、「取り残される不安」も排除しつつ、「一度きりの人生」を楽しんでいるように見えます。アメリカ人にとって、出会いのスタンダードはもはやネットやアプリに。

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(作成:My Big Apple NY)

結婚相手との出会い方も、様変わりしました。結婚情報サイトのザ・ノットの調査では、2017年の新婚夫婦において1位は「出会い系サイト・アプリ」の17%と「ソーシャルメディア」の2%と合わせた「ネット」が19%と、2015年の15%から上昇。実に5組に1組がネットということになります。

特に若い世代がネットでの出会いを牽引していると考えられ、ピュー・リサーチ・センターによれば、2013年から2015年の間に18~24歳の利用者比率は10%から27%へ急伸し、35~44歳の間では4%ポイント上昇の21%にとどまった結果と対照的です。

ネットの出会いが普及したように、それを支える産業も拡大してきました。業界調査会社IBISワールドは、米国でのネットに代表される出会い系市場の2019年売上高につき、前年比7.8%増の30億ドル超えを予想。米国の出会い系市場規模の8割以上のマッチ・グループ等を参加に収めるIACの決算資料では、出会い系部門の売上高は2019年4~6月期に前年同期比30.0%増の18.3億ドルと2桁増を達成していました。

そのうち、ご近所のシングルに出会えるアプリ、ティンダーの売上高は2018年に2倍の8.1億ドルに及んだといいます。ビートルズは「お金で愛は買えない(Money can’t buy me love)」と歌っていましたが、ネットが進化した現代では少なくとも、お金を払ってネットを駆使し出会い系サイトやアプリに登録すれば、デートや結婚の相手が見つかるようになったというわけです。

出会い系では他人同士がネットでつながるだけに、残念ながら犯罪に巻き込まれるリスクをはらむことも事実。トランプ政権はこうした問題に対応すべく、2018年4月にネット上での売春・人身売買防止法案(SESTA-FOSTA法)に署名しました。法案により、出会い系サイトやアプリなど運営側は利用者を管理する責務を負い、怠った場合は罰金、訴訟、懲役を科されるリスクが発生します。

法案の内容は曖昧な部分も多く当局側の裁量に掛かるだけに、地域情報サイトとして知名度の高いクレイグズ・リストは、違法行為リスクを排除するため出会いなどを求める個人情報欄を削除しました。トランプ政権と米議会が対応を余儀なくされたのは、ネットが出会いの場の主流となった証左でしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年9月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。