依存症回復シーンも 〜 話題の映画「ロケットマン」

田中 紀子

依存症関係者の間で「ロケットマンがすごい!」と話題になっていたので、私も夫と一緒に早速観て参りました~!

(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

いやはやまず自助グループミーティングのシーンからはじまるのにはぶっ飛び!
アメリカのリカバリーカルチャーは本当に羨ましい限りですね。

これアルコール、コカイン、買い物、セックス…などなど様々な依存症を抱えた、
ロック界のスーパースター、エルトン・ジョンがいかに依存症から回復したかを描いた映画なんです。

誰もが羨み、成功を手中に収めたかに見えるエルトン・ジョンが、内面に複雑な親子関係に対する淋しさを抱えていたり、親切に近寄ってくる人が実はお金目当てだったり、自分のセクシャリティに対する想いだったり….

外からは計り知れない、孤独や悲しみがあることにフォーカスをあて、それをエルトン・ジョンのパフォーマンスそのもののような“ぶっ飛び”手法で描いています。

「あぁ、エルトン・ジョンも機能不全家族で生まれ育った仲間であり、我々と同じように心の中にぽっかりと空白があって、それを依存で埋めようとしていた人なんだなぁ。」
と、ついシンパシーを感じてしまいました。

そしてハチャメチャな生活をしていながらも、こうして生き抜いてくれたこと、そして何よりも「回復」してくれたこと、さらには「回復のストーリー」を語ってくれたことに、海を超えた同じ依存症者として感激しました。映画化してくれてありがとう!と言いたいですね。

この映画本当に良くできていて、依存症の回復プログラムが相当考えて盛り込まれているんですよね。「これインナーチャイルドワークだな…」とか、見る人が見れば良く分かるはずです。

日本でもこうやって回復した有名人のストーリーが映画化されたり、ドラマ化されたり、そんな時代になって欲しいなぁと思います。回復を信じられ、応援される社会になるよう、エンタメの世界の皆さんに是非ご協力頂きたいです。

違法薬物を使ったとしても「人間」だし、人間をやめることなんかできないんです。
この映画を見て、日本の民放連が80年代に作った「覚せい剤やめますか。人間やめますか。」というコピーがいかに罪深く、悪影響を与えたか実感していただけたらなぁと思います。

エルトン・ジョンは、我々の仲間であり、誇り高き回復者です。
そしてもちろん今でもこれからも「人間」です。
皆さん、「ロケットマン」是非、ご覧下さい。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト