大阪府高槻市にある大阪府三島救命救急センターがクラウドファンディングで4000万円以上を集めたという記事を発見しました。
クラウドファウンディングとは、不特定多数の人がネット上で様々な新商品開発や企業・スタートアップ事業などを支援や、出資を募る手法。日本ではリスクマネーの供給強化の手段の一つとして、2014年に金融商品取引法が改正されました。有名なサイトとして、アメリカのKickstarterや日本のMakuakeなどがありますが、最近では京都アニメーションの再建にクラウドファウンディングで支援が行われました。
今回のクラウドファンディングは、このセンターの医療の維持のためということなんですが、大阪府三島救命救急センターは摂津市・茨木市・高槻市・島本町で構成される公益財団法人で運営され、三市一町の災害拠点病院にも指定されており、大阪府の災害派遣医療チームの大阪DMATを有する医療機関です。実はこの救命救急センターは、施設の老朽化や耐震性の問題などから、3年後に大阪医科大学に移転することが決まっているのですが、しかし人手不足に伴う患者受入れを制限せざるを得ない状態で、当面の運営を安定化させるためにクラウドファンディングを実施しました。
救命救急医療を一定水準以上で安定的に供給すること自体が難しいという背景があるようですが、そもそも全国的に見て救命救急医療の現場はかなり深刻な問題を抱えています。最たる問題は人手不足です。なぜならば、過酷とも言える職場環境にあって、日々の業務においては食事すら満足に取れない現実があります。
我々、毎日のように救急車に遭遇しますけれども、命がかかっている患者さんの場合は、このセンターのような三次救急医療機関に搬送されています。
そもそも、救急指定は一次救急、二次救急、三次救急と3種類に分かれており、三次救急は一次・二次で対応できない高度な救急医療を提供できる医療機関であり、まさに「命の最後の砦」のような存在です。当然ですけれども、事故は突然発生する、病気は突然発症することが多いわけです。また地震や豪雨なども予告があるわけではありませんよね。万が一の状況に備えて常にシフトを組まなければならず、いざとなったら残業に次ぐ残業も有り得ます。
ですから、医師にも看護師にも「不人気で、離職者も多く、人手不足、だから過酷」という悪循環になっており、収入面でも医療スタッフが少なく、受け入れ患者数が減り、収入が減る。結果、出費が制限され、設備や待遇が悪化するという、こちらも悪循環です。
このセンターの場合は、大病院の中の一部門ではなく、単独の期間で、一般外来を受け入れず救急医療の専門施設です。まさに地域の人にとって命綱と言えます。
そこでこの3ヶ月間クラウドファンディングで寄付を募り、最終的に総勢1907人 合計41,831,000円が集まり目標金額の2000万円を大きく上回りました。
全国からこうしたことに多くの善意が集まったことは心もほっこりしますけれども、しかし美談でよかったでは駄目だと思います。なぜならば、他の救命救急機関でも同じようにクラウドファンディングをやればいいわけではありません。やはり根本を改善しないと駄目だと思います。
例えば眼科、皮膚科、放射線科、形成外科などは、医師からも看護師からも人気がある職場すなわち言い方悪いけれども、救命救急より人気があります。診療報酬に明確な差をつけるなどして、救命救急の医師や看護師の待遇を改善。そして、人気のある職場にしていくことも考えなければいけないと思うのです。
それから、過去のブログでも言いましたけれども、安易な救急車の利用が救命救急の忙しさに拍車をかけているということも考えるべきです。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年9月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。