前沢友作氏が創業した衣料品通販サイト首位のZOZOが、ヤフーと業務提携。そして、前沢氏は社長の退任を発表しました。電子商取引(EC)の拡大を狙うポータルサイト運営会社が、ネットアパレル販売の会社を買収する目的はシナジーです。
前沢氏は短期間にアパレルの通販のトップ企業を育てあげた起業家ですが、それを自らの手で更に大きくしていくことより、次の新しいスタートを考え、実践することの方が好きで向いている経営者です。
ヤフーは既にネット宿泊サイトの大手である一休や、事務用品の販売会社のアスクルなど様々な企業を傘下に収めてきました。その戦略の一環と考えることができます。
潤沢な資金力をバックに次々と企業を飲み込んでいくヤフー、そしてその親会社のソフトバンクのスピード感は、日本の会社の中では異色です。
しかし、そこに盲点は無いのでしょうか。
記者会見に登壇した孫正義氏(写真)が率いるソフトバンクグループは、ビジョンファンドを通じ、巨額の資金を集め、世界のIT企業に次々と出資しています。どの会社も一気に成長を進め、マーケットシェアを握り、時価総額を拡大し、上場するシナリオで動いています。
私が気になったのは、ソフトバンクが出資する「ウィーワーク」を運営するウィーカンパニーが、想定時価総額を市場予想の半分まで引き下げたというニュースです。同社には、ソフトバンクグループが、累計で1兆円以上出資しています。
ウィーワークは、大都市でオフィス物件を調達し、改装してセットアップした上で、個人事業主やスタートアップ企業にマンスリーで貸し出すというものです。会員数は増えているものの、それと並行して赤字額も膨らんでおり、収益性に疑問符が付けられています。
アメリカで書籍の販売から始まったアマゾンも創業からかなり長期間にわたって黒字化せず、投資家から疑問符を突きつけられたこともありました。しかし、最終的に時価総額世界最大の企業にまで大きな成功を果たしました。
しかし、すべてのIT企業が、アマゾンになれるわけではありません。
成功する企業の見極めには、冷静な目利きと、時代の流れを読み取る投資家のセンスが求められます。正しい戦略であっても、経済環境の変化など想定外の事態によって、途中でシナリオが大きく変われば、投資が大きな失敗に終わるリスクも出てきます。
孫正義氏が、100年に一度の傑出した企業家であることは間違えありません。しかし、稀有な人材が常に稀有な結果を出せるとは限りません。規模が大きくなり、舵取りをする対象が大きくなればなるほど、その不安は高まります。
数々の修羅場を潜り抜けて、一代で世界有数の企業グループを築きあげた孫正義氏のこれからの手腕に注目したいと思います。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年9月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。