千葉県、停電・断水の現場から 〜 支援はまったく足りていません!

畑 恵

台風15号の直撃を受けた千葉県君津市に住む叔父夫妻の安否が心配で、先週金曜日に支援物資を携え現地入りしました。

君津市では送電線をつなぐ高さ約57メートルと45メートルの鉄塔2基が倒壊、当初は県内約64万戸が停電に見舞われました。

90歳を超え、現在はケアハウスに入居している叔父夫妻を訪ねると、お陰様で二人ともとても元気そうで安堵しましたが、停電、断水、電話回線不通、さらには記録破りの猛暑という四重苦の中、毎日ほぼ水とおにぎりだけで丸4日間を(しの)いだとのことでした。

支援物資として私は、水やお茶のペットボトル、パンや野菜ジュース、常温で長期保存できる牛乳パック、カップ麺や缶詰などの保存食、着替えとなる下着やTシャツ、紙パンツやボディータオルなどの衛生用品、乾電池やラジオを前日までに買い集め、当日には弁当や惣菜、ソーセージや漬物といった比較的日持ちする食料を購入、クーラーボックスに入れて持って行きました。

運良く叔父夫妻の居住地域は、その日の未明に停電・断水が解消したので、多めに運んで来たペットボトルの水は近くの市民ホールにすべて運び、そこの水道で水汲みをしていた方々にもらって頂きました。

NHKニュースより

NHKニュースを見ると、千葉県の各市町村担当者が「物資は足りている」という旨の発言をし、実際にそのような情報が公式に発表されていますが、現場はまったく違います。

停電しているどの地域でも実際には、食料や乾電池、ラジオやランプなどをはじめ、あらゆる物資が圧倒的に足りていません。

では、なぜ市町村がそのような発表をするかというと、第一の理由は支援物資を送られても、それらを整理して保管し配布する人員がまったく不足しているからです。

第二の理由として、地域全体に配布できないと不平等になってしまうから、個別の支援物資は一切受け付けないということもあげられます。

第三の理由は、どこでどのような支援物資が必要とされているか、ほとんど把握できていないこともあります。

私は東日本大震災以来8年半にわたり、作新学院という場で大規模な災害が発生するたびに、ささやかながら支援に携わって来たので痛感していますが、よほど十全の備えをしているか、有能なリーダーのいる市町村でない限り、行政組織から支援要請が出るまで支援の手をこまねいていたら、災害現場にいる人々は息絶えてしまいます。

ですからどこかで災害が発生したら作新学院では、何か縁があるところはないか「オール作新」で声を掛け合って探し、そこを通じて現場に必要な物資や支援内容を聴取して、直接に物資や義援金を届けるようにしています。

君津のケアハウスは高速道路のインターチェンジから至近だったこともあり、早朝に都心を出発したら1時間ほどで現地に到着することができました。

この日は午後から仕事があって、昼過ぎには東京駅から新幹線に乗らねばならなかったのですが、必要な物資を運んで簡単な片付けをする程度なら、東京から半日あれば十分です。

週末にがっつりボランティアに参加するのは何より素晴らしいことですし、募金に参加することも重要だと思いますが、たとえ丸一日ボランティアに入れなくても、ほんの少しの気持ちと行動力さえあれば、今困っている方々の力にすぐなれる支援は幾つもあると、今回の経験で実感しました。

「初動が遅い」「対応が鈍い」「見通しが甘い」「大臣がバラバラに現地入りしたって、司令塔を内閣が作らなければ意味がない」と、政府や県や東京電力を批判することはもちろん大切で、実際その通りだと思いますが、批判だけしていても状況は改善しません。

未だ6万戸以上で停電が続いている中、運良く災害を免れた一人ひとりが少しでも有効に自分の身体や頭や心を被災された方々のために使うことが、いま何より求められているのだと思います。


編集部より:この記事は、畑恵氏のブログ 2019年9月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は畑恵オフィシャルブログをご覧ください。