現台湾総統と現高雄市長の一騎打ち?総統選立候補者ほぼ固まる

高橋 克己

来年1月11日に投票が予定されている台湾総統選挙の立候補が17日、実質的に確定した。政党の推薦がない場合の立候補に必要となる署名集めの届出が同日に締め切られたからだ。

蔡英文氏(公式サイト)、韓国瑜氏(Wikipedia)

7月に行われた最大野党国民党の候補者選びで韓国瑜高雄市長に敗れた郭台銘鴻海精密前董事長は16日深夜、無所属での立候補を断念する旨を声明した。立候補が取りざたされた台北市長の柯文哲氏も自ら8月に立ち上げたばかりの台湾民衆党には推薦資格がなく署名集めが必要だが、17日中に届け出をしなかった。

他方、「喜楽島連盟」の推薦を受けた元副総統の呂秀蓮元氏(75)が、17日に署名集めを届け出て立候補を表明した。独立志向の強い喜楽島連盟は7月に発足したばかりの新政党で、これも候補者を推薦する要件を満たさないことから、締め切り日に届け出ての立候補となった。

11月2日までに呂秀蓮氏が有権者の1.5%(約28万人)の署名を集められれば立候補要件を満たす。そうなれば来年1月の総統選は、民進党の蔡英文現総統、国民党の韓国瑜高雄市長、そして喜楽島連盟の推薦を受けた呂秀蓮元副総統の3候補で争われることになる。

現地の報道によれば、郭台銘氏は柯市長に副総統としてペアで立候補することを要請したようだ。総統選は正副総統がセットで立候補する必要があるからだ。蔡総統と韓市長の副総統候補はまだ決まっていないようだが、呂氏の副総統候補は彭百顯元南投県長(70)と報じられている。

ところが柯市長は郭氏の要請を固辞した。報道によれば柯市長が副総統候補を断った理由は二つ。一つは彼が現役の台北市長であること、他は選挙には膨大な時間とお金が掛かること。彼は台北市長の実務を熟しながら選挙戦を戦うことはたいへん難しいとの趣旨を述べた。

筆者にはこの柯文哲氏の立候補断念の弁が、国民党の候補の韓国瑜高雄市長への強烈な当て付けに聞こえる。なぜなら高雄市長でありながら立候補を決めた韓氏に対し、高雄市民が猛烈な批判を浴びせたからだ。韓氏は例によって総統になっても高雄で執務するなどと嘯き、これがまた高雄っ子を怒らせた。

他方、出来立ての喜楽島連盟の推薦を受けた呂秀蓮元氏が立候補要件を満たすようなら、日ごろ蔡英文に物足りなさを感じている、民進党よりも強く独立を望む層の票を相当程度奪う可能性があり、国民党の韓国瑜候補に有利に働く可能性がある。

香港での大規模デモの影響もあり、台湾の民主主義が維持できるかどうかを選択する重要な選挙だ。筆者は喜楽島連盟が推薦する呂秀蓮氏の署名が28万票に至らず、反中国票が蔡英文氏に一本化されることを望んでやまない。また蔡氏は一刻も早く頼清徳氏に副総統候補を要請すべきだろう。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。