超高速鉄道「リニア中央新幹線」とは何か
JR東海が建設中の「リニア中央新幹線」は、東京~大阪間515キロを最高時速505キロで走行する超電導磁気浮上式リニアーモーターカーであり、日本初の超電導リニアによる超高速鉄道である。2011年に整備計画が決定され、すでに超高速走行実験も実施されている。
2027年には東京~名古屋間が完成し40分で結ばれる。そして、2045年には東京~大阪間も完成し僅か67分で結ばれる。東海道新幹線の最高時速は285キロであるから2倍近い超高速であり、走行実験では最高時速600キロを超えている。
建設理由は、1964年開業の東海道新幹線の老朽化・過密化、地震・津波など大規模災害への代替路線、経済波及効果などである。全体の建設費は8兆3000憶円~9兆9000億円とされ、そのうち、公的資金3兆円が国からJR東海に融資される。
中国・上海では、すでに2004年からリニアーモーターカー「MAGLEV」の営業運転が行われており、上海浦東空港と上海市内を最高時速430キロで結ぶ交通手段となっている。
「リニア中央新幹線」建設を阻止する日本共産党
このように、「リニア中央新幹線」は2027年の東京~名古屋間の開業に向けて建設中であるが、日本共産党はこの建設に絶対反対し、建設工事の中止と建設認可の撤回を強く要求し、沿線住民を巻き込み大規模な建設絶対反対阻止運動を展開している。
共産党の建設絶対反対阻止の理由は、
- 東京~大阪間の輸送需要が伸びず採算性に問題があり、時間短縮への国民の要望も必要性もない。
- 地震・津波対策は、代替路線の建設よりも、東海道新幹線の地震・津波対策こそ行うべきである。
- 8割がトンネルで運転手が乗車せず、遠隔操作による運行のため、事故・火災・地震など安全確保に不安がある。
- 強力な電磁波による人体への影響も懸念される。
- 南アルプストンネル工事などにより、自然環境が破壊される。
- 消費電力が東海道新幹線の3倍以上であり、エネルギー消費型交通体系を導入すべきでない。
- 公的資金3兆円の一私企業であるJR東海への融資は、国民の大きな負担となり許されない。
などというものである。
国土の構造を変える画期的な「リニア中央新幹線」
上記共産党の反対理由のうち、安全性や環境問題については、筆者もそのすべてを否定するものではない。したがって、JR東海としては、上記反対理由(3.)(4.)(5.)の不安や懸念を払拭するための万全の対策を講じるべきである。又、完成開業後の運行についても安全対策に万全を期すべきは当然である。
しかしながら、「リニア中央新幹線」の開通により、首都圏、中京圏、近畿圏を併せ、実に6500万人という巨大都市圏が誕生し、国土の構造が変わる。東京~名古屋~大阪の三大都市圏が僅か1時間で結ばれるインパクトと経済波及効果は計り知れないのであり、21世紀日本の国際競争力の強化と人々のライフワークを変革する契機となる。
このように、劇的な時間短縮や高い輸送力により、幅広い分野における経済効果が期待され、名古屋の「中部圏社会経済研究所」の試算では、東京~名古屋間の開通で、10年間の経済効果は14兆8204憶円にも上る。大阪まで全線開通すれば、その経済波及効果は計り知れないのである。
したがって、上記反対理由(1.)の採算性についても、上記の経済波及効果や、外国人観光客の拡大などは、輸送需要を増やし、当然採算性にプラスに働く。又、時間短縮は、特にビジネス客にとって重要であり、経済効率や生産性を向上させる。
上記反対理由(2.)については、東海道新幹線は1964年の開業後50年以上経過して老朽化し、ダイヤも超過密化しており、大規模な地震や津波に備え、代替路線としての「リニア中央新幹線」の必要性は大きい。
上記反対理由(7.)については、本件は極めて公益性の高いプロジェクトであるから、利便性・経済効率の向上など必ず国民に利益が還元される。
日本共産党は「リニア中央新幹線」建設を阻止するな
日本共産党による建設絶対反対阻止の運動は、「リニア中央新幹線」建設についての不安や懸念のみをことさら強調するあまり、上述した21世紀日本における建設による諸々の高い公益性や経済波及効果などのプラス面を一切無視していることである。
共産党は、古くは、戦後日本の高度経済成長をもたらし、国民生活を向上させた自民党池田内閣の「国民所得倍増計画」に対しても、「独占資本奉仕の反人民的本質を有する」(日本共産党中央委員会著「日本共産党の70年(上巻)」308頁1994年新日本出版社刊)と称して絶対反対をした過去がある。
「リニア中央新幹線」建設に絶対反対し、これを阻止する日本共産党は、21世紀日本の成長発展を阻止する政党であると言う他ない。
加藤 成一(かとう せいいち)元弁護士(弁護士資格保有者)
神戸大学法学部卒業。司法試験及び国家公務員採用上級甲種法律職試験合格。最高裁判所司法研修所司法修習生終了。元日本弁護士連合会代議員。弁護士実務経験30年。ライフワークは外交安全保障研究。