ALS恩田聖敬の『岐阜再発掘!!』①海の無い岐阜の牡蠣小屋

知っていますか?
牡蠣が冬だけじゃなく、年中食べられることを

知っていますか?
この海の無い岐阜に、年中牡蠣食べ放題の店があることを

知っていますか?
三陸の牡蠣は夏でも生で食べられる抜群の鮮度であることを

知っていますか?
その店は、三陸の牡蠣小屋そのままの雰囲気を味わえることを

知っていますか?
店主の三陸への復興支援の思いを

岐阜県御嵩町、可児御嵩ICから車で2分のところにその店はある。店名は『宮城の牡蠣小屋 岐阜御嵩店』。あまりにそのまますぎる店名に、店主の実直な人柄が伺える。また、岐阜御嵩店と付けているところに、「1店舗で終わるつもりはない!」という店主の思いをひしひしと感じる。

この店で仕入れる牡蠣は、全て東日本大震災で被災した、三陸地方産だ。中でもこの店で取り扱っている牡蠣は、店主お墨付・年中(もちろん夏も!)鮮度抜群だ。(恥ずかしながら私は冬の旬物のイメージしかなかった。)

店のホームページに次のように説明がある。

牡蠣小屋の牡蠣は生でも安心してお楽しみいただけるように、浄化処理を施した生食可能なカキを使用しています。滅菌された海水で浄化処理することで、カキ体内の細菌を洗い流しています。

店主自らが三陸に足を運び、信頼できる卸業者からの(市場も通さず)直接仕入れであるからこその品質である。

その証拠に、この店は基本的に年中無休。良質な牡蠣の仕入れが不可能な日のみ休業日だ。よって、店を訪れる時は事前に予約する事をお勧めする。

ここで店主の思いに触れておこう。

元々岐阜市内でオイスターバーを経営していた店主。この店は、震災から3ヶ月後にオープンした。当時は全国から牡蠣を仕入れており、三陸は取引先の1つに過ぎなかったそうだ。

そこから牡蠣小屋につながる経緯を店主は語ってくれた。

「震災から数年後に女川や石巻を見て回る機会に恵まれまして、まだ瓦礫などのある状態を目の当たりにしました。港にある曲がりくねったガードレールを見た時に、波の凄まじさを感じたのを今でも覚えています。その時強く思いました。被災しなかった場所に住む我々も同じ国に住む者として、口だけではなく行動でなにかしなくてはいけないと。」

店主は行動を起こした。三陸とパートナーシップを結び、2015年9月に東海エリア初となる年中常設の牡蠣小屋をオープンさせる。現在の店である。「一日も早く牡蠣を売って欲しい!1年先・2年先まで待っていては首を括っているかもしれない!」という現地の要望に応える、超特急オープンだったそうだ。また、これを機にオイスターバーも含めて、仕入れ先を三陸に一元化する。稀に見る行動力である。

しかしその後予期せぬことが起きる。市内の再開発の為、オイスターバーが立ち退き対象となったのだ。2018年6月、オイスターバーはやむなく閉店、残された牡蠣小屋で店主は思いを持って孤軍奮闘している。

先日、私も店を訪れた。幹線道路に面しており、高速のインターも近く、立地条件は悪くない。店主曰く、長野や大阪まで200㎞圏内は、本物の味を求めるお客様は来店されるとのことだ。

そこまでお客様を虜にする牡蠣を実際に見せてもらった。想像していたよりも小ぶりだ。しかし、店主が言うには、2~3年育てて大きくするよりも、1年くらいのこの大きさが一番美味いという。

そしていよいよ試食。当日の気温は35度。夏の暑さの中、牡蠣小屋(テント)で生の牡蠣を食べるなど、私のこれまでの人生の常識では考えられないことだ。

私はALSな故、牡蠣の汁と牡蠣の身をほんの一欠片食した。私の口の中に心地良い風味が広がった。これは間違いなく美味い!

店主が牡蠣を選ぶ優先順位を語ってくれた。まず安全であること、次に味、最後が価格だそうだ。猛暑の牡蠣小屋で、お客様に生牡蠣を提供していることが、店主の言葉に偽りがない何よりの証拠である。

「ウチの牡蠣は確かに安くないです。良いものだけを仕入れてますから。今、国内で適正価格が付かない商品は輸出に回されています。このままでは、日本から良いものが消えます」

店主は未来の漁業界を憂い、行動を起こし続けている。

一年中生で食べられる鮮度なら、焼いても蒸しても、カキフライにしても美味いに決まっている。私のこれまでの常識では、殺菌の為に焼いたり揚げたりして火を通すが、牡蠣小屋では調理方法の違いに過ぎないのである。

最近三陸を訪れた店主は、牡蠣以外の海産物も仕入れてきた。今後サイドメニューも充実させて行くとのことだ。この店主のことだ、他も安全で美味いに違いない。

店主はその他にも、開店当時の苦労や地域貢献への思いを語ってくれた。声掛けがあれば、テント片手に屋台も出せる、もっと多くの方に牡蠣の美味しさを知って欲しい、夏ならバーベキューの食材にも使えると述べていた。

最後に復興支援への思いを、店主は力を込めて私にこう言った。

「お客様にもいつも言っています。一年で牡蠣を三回くらい食べるなら一回は三陸の牡蠣を食べてあげてください。もちろん牡蠣でなくてもいいんです、日常でスーパーに行ったら1個三陸の物買おうかな、くらいで全然大丈夫ですので何か買って応援してあげようと行動し続けてくださいと。」

そして更にこう続けた「岐阜だからこそ、海のない場所だからこそ、忘れずに何かしら続けていく大切さに気づいてもらうきっかけになったら、と思い営業しています」

この店主の思いは本物だ!

是非一度足を運んで、店主と三陸の思いのこもった『本物の牡蠣』を堪能してみて欲しい。

【店舗情報】
店名
宮城の牡蠣小屋 岐阜御嵩店
TEL0574-49-6999
ホームページ

住所
〒505-0123
岐阜県可児郡御嵩町古屋敷557-1

アクセス
高速東海環状道路「可児御嵩IC」よりお車で2分
名鉄広見線「顔戸駅」より徒歩約13分

営業時間11:00~14:00
定休日不定休
※カキ売り切れの場合は休業となります。

【問い合わせ・屋台出店依頼・取材申し込み等】
[email protected]


この記事は、株式会社まんまる笑店代表取締役社長、恩田聖敬氏(岐阜フットボールクラブ前社長)のブログ「片道切符社長のその後の目的地は? 」2019年9月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。