千葉県を襲った台風で送配電網が寸断し、停電は長期に及んだ。電柱が倒れたのが原因なので、無電柱化に関心が集まっている。西日本新聞の9月24日付社説「台風で広域停電 命を守る「無電柱化」急げ」はその典型である。
しかし、その社説にも「道路1キロ当たり約5億円が必要」とあるように無電柱化には莫大な費用が掛かる。低コスト技術が進んだとしても、家屋が密集する都市部であればともかく、1キロに1軒というような過疎地では無電柱化の費用を回収するのは困難である。無電柱化だけが解決策とは言えないのである。
昨年8月のFinancial Timesに「Smart grids show their power in adversity」という記事が出ていた。カリフォルニア州での大規模な山火事の際に、太陽光発電と天然ガスタービン、バッテリと直流交流変換器を有するスマートグリッド型の小規模電力会社が力を発揮したとの記事だった。
Financial Timesの記事によれば、2026年までにアジア太平洋では41%が、北米では31%が、中近東とアフリカでは14%が小規模電力会社による電力供給になるとのコンサルティング会社(Navigant Research)の予測もあるそうだ。
平常時には大規模電力会社と小規模電力会社が連携し電力を提供する。大規模電力会社の送配電網が寸断される緊急事態には、その地域に必要な最低限の電力を小規模電力会社が提供するというのは、合理的な対応策である。全国を無電柱化するのに比べて費用もしれている。
わが国にも小規模電力会社が存在する。会津電力はその一例で「会津地域のエネルギー自立」を目指している。農業用水路を利用して小規模な水力発電に挑戦している岐阜県郡上市の石徹白(いとしろ)地区のような例もある。大分県も推進している。
千葉県での大規模停電は電力供給の在り方について考える機会になった。せっかくのこの機会に電力の地産地消についても検討するのがよい。
山田 肇