新内閣発足後初の衆院予算委員会が11日に開催され、早速、初入閣の菅原一秀経産相や小泉進次郎環境相らが野党からの追及に晒された。特に菅原大臣は、恨まれた?元秘書から流出したらしい地元民や政治家へのメロンやローヤルゼリーなどの贈答品リストを立憲の本多議員に持ち出された。
菅原氏は「調べる」とかわしたつもりが「団扇で辞めた大臣もいる」と揶揄された。菅原氏は河野太郎氏と共に身内への高姿勢と反原発で知られ、野党時代には民主党政権の原発政策を激しく攻めた。反原発には河野氏同様「内閣の方針に従う」と対応するだろうが、所管大臣だけに厄介だし、贈答品問題は相当に悩ましかろう。
一方の小泉大臣には、9月に立憲の国対委員長を外れた辻元清美議員が、何と森友問題での小泉氏の過去発言を持ち出してネチネチやった。辻元氏といえば2017年2月の森友問題勃発には一役買ったものの、籠池夫人から関西生コン発言が出るや、以来2年7か月この件からも国会質問からも手を引いていた。
その辻元vs小泉のやり取りを書き起こせばおおよそこのようだ。
辻元:(小泉氏は)「平成の政治史に残る大きな事件」といったが、今もそう思っているか?
小泉:私なりに思うことを率直に述べた訳でありまして、どういう疑惑があってもそれに対して誠実に答えてゆくのが政治家の務めと考えている。
辻元:さすが小泉進次郎と思った発言があるんです。こうも仰っている。「なぜ書き換えたのか、何が真実なのか?」 やはり知りたい真実、知ることができたのか?安倍内閣の一員であっても答えられるはず。あなたの言葉で答えて下さい。(辻元氏、「進次郎がんばれヨ!」とヤジ)
小泉:その時に発言したことは、私は今もその思いは変わりません。ただ、今大臣として安倍内閣の中で、その果たすべき責務を自分の思いを持ちながら遂行することもまた当然であります。私自身は政治家として、官僚の皆さんに責任を押し付ける様なことは決してしたくない、してはならないと思っています。
辻元:「官僚の皆さんに責任を押し付けることは決してしてはならない」、今も仰いました。前もいってました。森友問題ではですね、誰か政治家が責任を取りましたか?
小泉:今日、辻元先生からどの様な質問をされるかということについての通告は受けておりません。ぜひ実りある議論をこういった場で積み重ねるためにも、通告の方をしっかりして頂くと、より前向きな議論ができるんじゃないかと思っています。
辻元氏にしてみれば、この小泉氏との問答はほぼ目論見通りの出来だったのではなかろうか。なぜなら仮に小泉氏が「自分の言葉」でポエムを語ったとしても、また今回のように優等生の答弁に終始した場合でも、多くの国民が小泉氏に懐く「何かやってくれそう」との期待を裏切らせることができるからだ。
新大臣にその過去の発言を持ち出し、現下の見解を質すのは野党の常套手段だ。稲田防衛大臣が靖国参拝などを含む過去の右寄りの言動を論(あげつら)われたのはまだ記憶に新しい。まして話題の小泉氏、その場その場で語ってきた数々のポエムをこれからも時に応じて持ち出されることだろう。
然らば今回の辻元質問に小泉氏はどう対応すべきだったか。それは事実に基づいて毅然と退けるということだ。小泉氏といえども、この8月に大阪地検特捜部が検察審の「不起訴不当」決議に基づき再捜査した結果、佐川元国税庁長官ら10名全員を再び不起訴処分にしたことは知っていよう。
財務省も昨年6月に、3月に減給20%・3ヵ月の処分を受けて依願退職した佐川元国税庁長官に対し、国家公務員法に基づく懲戒処分としては2番目に重い停職処分を遡及適用、相当する金額を退職金から減じるなど関係者を処分した。
政治家は改ざん前の文書に名前の出た故鴻池氏以外は全く無関係であり、唯一、監督責任のあった麻生財務大臣が閣僚給与1年分170万円を返上してささやかながら責任を取った。これらをもって森友問題は完全に落着した。
他方、関西生コン関係の逮捕者は8月末時点で80名を超えた。また森友問題では籠池氏の長男佳茂氏が9月に『籠池家を囲むこんな人たち』を上梓、ネットにも頻繁に出演して「昭恵夫人の100万円は菅野完氏の捏造」だとか「菅野氏の資金源は朝鮮総連」と言い切っている。関生、菅野、朝鮮総連の方が余程怪しく思える。
ちなみに同書のアマゾンの内容紹介にはこうある。
- 籠池泰典の実の息子が森友問題に終止符を打つ!
- 安倍総理夫妻は、森友問題とは無関係!
- 愛国者の両親をとことん利用する反安倍派の人々。
- 「ぼくが助けてあげますよ」と甘い言葉で近寄った菅野完や山本太郎
- あんな人も、こんな人も籠池家に群がった!
- 愛国者だった両親
- 騒動はこうして始まった
- 両親が左翼側に取り込まれた理由
- 籠池家をとりまく菅野、政治家、マスコミ関係者、弁護士事務所、市民活動家
- 左翼に利用される籠池夫婦
- 息子として両親に伝えたいこと
佳茂氏はネット番組で、「昨年3月に野党議員4名(共産党小池晃、民進党今井正人、自由党森裕子、社民党福島瑞穂-所属は当時)が籠池宅に来て以来、両親はあちらに行ってしまった。上京時の世話一切も菅野氏が焼き、彼にはしばしば野党議員から電話も入っていた」との趣旨のことを語っている。
筆者は一昨年、2月から5月までに衆参両院で22回開かれた、籠池氏の証人喚問を含む予算委員会の約68万字に及ぶ議事録と同年6月に公開された財務省改ざん文書14通の全てに目を通し、その夏に取りまとめた拙稿を本年2月に本欄に投稿した。
森友問題は本欄の読者諸兄姉の目には、筆者同様に2年以上前からでっち上げであることが明白な事案だ。それを関西生コン絡みでいっちょ噛んでいると疑われる辻元氏が、今回、小泉氏をおちょくるつもりで取り上げたとしたら、それは辻元氏にとって却って「藪を突いて蛇を出す」ことになるだろう。
国対委員長を外れた辻元氏など、もはや自民党にとって何の利用価値もあるまい。
高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。