米国からの制裁に耐えて政権継続にあらゆる手を尽くしているベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は北朝鮮との関係強化に動いた。その狙いは長年制裁をかわすことに長けている北朝鮮からそのノウハウを学ぶためのようだ。
ラテンアメリカとスペインに関係した情報を伝える電子紙『ALNAVÍO』は、ワシントンの情報筋が語ったことだとして、マドゥロがこの行動に出た理由は「北朝鮮の金正恩と関係を持つように」というキューバからの助言に従ったからだとしている。経済封鎖と制裁から生き残ることをマドゥロが学ぶには北朝鮮との関係維持が最適だということなのだ。
キューバ革命は北朝鮮の共産主義の発展の参考になったとしてフィデル・カストロの時代からキューバは北朝鮮とは友好関係を結んでいる。
米国の最新防衛研究センターによると、北朝鮮は次のような手段を使って制裁をかわしていると報告している。
- 港への輸送に複雑なシステムを採用している。
- 公海を利用して密送している。
- 一般の企業を装って中で秘密活動をしている。
ジョン・ホプキンス大学で北朝鮮経済フォーラムの会長を務めるブラドリー・ロブソンは、スペインのラ・バングアルディア紙に寄稿して北朝鮮が制裁を逃れることがうまくなっているということと、外国企業の支援を受けていることを挙げている。
また国連は今夏、北朝鮮はサイバー攻撃の脅威の国となっていることと、この数年で北朝鮮のハッカーが20億ドル(2360億円)に相当するクリプト通貨を盗んだことも報告している。
米国や国際社会から封鎖や制裁が厳しくなっても、そこから抜ける方法は存在しているということを北朝鮮は実証済みで、マドゥロはそれを学びたいとしているのである。マドゥロは北朝鮮との関係づくりに次ぎのような過程を踏んでいる。
その第一歩が昨年9月の国連総会でベネズエラのアレアサ外相が北朝鮮の李容浩外相と会見したことであった。そして11月には最高人民会議常任委員長の金永南がカラカスを訪問して両国の関係をより一層強めた。(参照:hispantv.com)。
今年7月にマドゥロは息子のニコラティノ・マドゥロをネパールとベトナムを訪問させたあと平壌に派遣して共産主義青年者会議に参加させて金正恩を称賛。(参照:alnavio.com)
8月には平壌にベネズエラ大使館を設置し、その後、9月にはベネズエラのナンバーツゥーである制憲議会議長のディオスダード・カベーリョを平壌に派遣した。両国の間でテクノロジー、産業、軍事協力の分野で合意が交わされた。この合意内容の豊富さにマドゥロ大統領も「すごい合意だ」と驚きと喜びを表明したほどであった。
(参照:hispantv.com;alnavio.com)
しかし、カベーリョの平壌訪問の日程は、マドゥロがロシアを訪問する時に合わせたのである。マドゥロがモスクワに滞在している間に制憲議会議長の地位を利用してカベーリョが何らかの理由をつけてマドゥロ大統領を解任させる危険性から遠ざけるためであった。今年4月30日に起きたような軍事蜂起を再現させないためであった。(参照:alnavio.com)
次のステップはマドゥロが平壌を訪問することであるとしている。
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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家