人権侵害を行った国会議員が「情報漏洩」を指摘するのは筋違いだ

原 英史

森ゆうこ・参議院議員(国民民主党)の10月15日参議院予算委員会での国会質問は、もし国会外でなされていれば、法律上許されない行為だ。

国民民主党サイトより:編集部引用

森議員は、6月11日の毎日新聞一面記事(国家戦略特区WGに関して私が「200万円」を受け取ったなどの記事)を事実と決めつけ、「(原氏が)国家公務員だったらあっせん利得、収賄で刑罰を受ける(行為をした)」とまで言い切った。こうした事実は一切存在しない。

しかも、毎日新聞社は、私との訴訟では、私が直接ないし間接に実質的に金銭を受け取ったことを報じたわけではないと弁明している。つまり、情報源の毎日新聞社自身、すでに報道内容の根幹部分を事実上撤回してしまったような状態だ。

その中で、何ら根拠なく、虚偽の誹謗中傷を行ったことは、あまりに悪質だ。国会外ならば、名誉棄損罪にもあたりうる。国会内での発言は免責特権の対象とされるが、だからといって発言の悪質性は変わらない。

その森議員が、私や内閣府に対し、質問通告の内容を「情報漏洩」したなどと指摘しているらしい。およそ筋違いだ。

質問通告に関する経過を説明しておく。

1)10月11日夜20時頃、内閣府から私に、森議員が私に予算委員会への参考人出席要請をしていること、および国家戦略特区に関する質問通告の内容について、連絡があった。3連休を挟んで、実質的には前日夜のことだ。

参考人招致は、予算委員会理事会で決定されるので、この時点でまだ確定ではない。しかし、要請がなされた以上、内閣府が私に質問通告の内容も含め連絡したのは、当然のことだ。これが、「情報漏洩」になるわけがない。

2)質問通告の中には、特区ビジネスコンサルティング社(以下「特区ビジネス社」)について質問したいとあった。この会社は、毎日新聞記事で、「200万円」を直接受け取った(そして、同社と私に特別な「協力関係」があり、結局、私が金銭を受け取った)として取り上げられた会社だ。

これまでの野党合同ヒアリングでの発言などから、15日委員会で私への不当な中傷(なにか怪しいと決めつけるなど)がなされる可能性があると判断したので、私は自らの社会的信用を守るため、前日14日、特区ビジネス社について質問通告があったことをSNSとアゴラで明らかにし、正しい事実関係を説明した。

森ゆうこ議員の国家戦略特区に関する質問通告に関して(アゴラ)

ただ、当日の委員会では、私の予想をはるかに上回り、完全に虚偽の悪質極まりない質問が繰り広げられたのは、すでに述べたとおりだ。

これを「情報漏洩」と呼ばれるいわれは全くない。

3)質問通告の中には、「嘉悦大学」とも書かれていた。

経過に触れておくと、

・6月下旬、嘉悦大学教授の高橋洋一氏から私に、「毎日新聞から嘉悦大学関係者に、国家戦略特区関連で不正があったかのような取材が来ている。嘉悦大学は特区提案などしていないはずだが」との相談があった。

・私はこれを内閣府にも伝え、念のため、嘉悦大学からの特区提案は過去になかったことを確認した。

・その後、取材もなされた結果、毎日新聞でこの件の記事が掲載されることはなかった。

ところが、森議員からの質問通告で突然出てきたので、私は11日夜に高橋氏に連絡し、私への参考人出席要請があったこと、質問通告に「嘉悦大学」とあることを伝え、「その後、毎日新聞などからの問合せがあったのか」を確認した。

固有名詞を記載した質問通告がなされている以上、当然の対応だ。

なお、森議員は15日予算委員会で言及こそしなかったが、配布した資料には、「嘉悦大学」の名前が記載され、別のページで高橋氏の顔写真も掲載されていた。資料の出典は「株式会社特区ビジネスコンサルティング会社案内より森ゆうこ事務所作成」とされていた。これが、どこから入手した、どのような性格の資料なのかは、今後、明らかにされるべきだろう。

4)森議員は、私が池田信夫氏に事前に連絡したことにも言及しているようだ。

これは、質問通告の時間が遅かったのかどうかが、ネット上で議論になっていたので(池田氏の主宰するアゴラを含め)、不正確な情報や憶測による混乱を防ぐため、必要な範囲で池田氏に情報を伝えたものだ。つまり、「11日20時頃に内閣府から参考人出席要請などの連絡があった」ことを伝えた。

通告内容については「国家戦略特区について」と伝えただけで、また、通告時間について「途中段階で滞留した可能性」のあること(つまり、森議員の通告はもっと早かった可能性があること)も公正に伝えた。この点は森議員に感謝してもらってもよいぐらいで、何ら「情報漏洩」はない。

ともかく、問題は、森議員が国会において、虚偽情報に基づき、悪質な人権侵害を行ったことだ。「情報漏洩」などといって話をそらしてみても、そこに跳ね返るだけだ。

原 英史
1966年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理などを務める。著書に『岩盤規制 ~誰が成長を阻むのか』(新潮新書)など。


編集部より:この記事は原英史氏のFacebook投稿をベースに一部加筆・作成されました。