金融緩和競争:金利深掘り、墓穴掘り?

今、世界が先の見えない金融緩和競争に入っています。
先月9月にはヨーロッパの欧州中央銀行(ECB)とアメリカの連邦準備理事会(FRB)が金利の引き下げ、いわゆる金融緩和を相次いで強化しましたので、我が日銀にの動向に注目が集まりましたが日銀は9月に開かれた金融政策決定会合で現状維持を決めました。

我々の金利は0.001%、限りなくゼロですし、量的緩和を拡大してお金を増やそうとしても日本の借金、いわゆる国債の46.5%と半分近くを日銀が買い上げている状態ですから、率直に言って手詰まり感があるわけです。

日銀保有  4,837,042億円
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国債合計 10,409,806億円
※令和元年6月末現在

そんな中、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は「マイナス金利の深堀」ということに言及しています。

以前、マイナス金利の導入決定をブログでもお伝えしましたが、もう3年半前の出来事なんですね。
※過去ブログ 日銀が劇薬「マイナス金利」それでもヤバいなぁと思うワケ(2016.2.22)
https://www.nakada.net/3450/

簡単に説明すると、民間の銀行が日銀に預けるお金の一部がマイナス金利になり、我々の預金金利はまだマイナス金利にはなっていません。しかし、黒田総裁の言う「深堀」はマイナス金利をより拡大するということですから、そうなれば民間の銀行、金融機関の経営が圧迫されますので、我々の預金もマイナス金利になるかもしれません。黒田総裁の深堀発言を受けて、メガバンクのトップも言及を始めました。これは国民向けの予告なのか、それとも日銀への牽制・警告なのか……私は両方だと思います。具体的には口座維持管理手数料の導入が検討されているようです。すなわち我々が銀行に持っている口座を管理するために年間1000円の手数料がかかるとしましょう。そうすると銀行に預金していると手数料が引かれて、実質的は預金額がマイナスとなってしまうわけです。

実は北欧のデンマークでは2012年と日本よりも早くマイナス金利を実施し、その結果、今や住宅ローンもマイナス金利になっているんです。これ、わかります?
お金を借りると、通常は利息を払うはずが、利息がもらえるのです。当然、住宅ローンを借りる人が増えますよね。借りたお金に利息がかからないばかりか、借りたお金より返済額が少ないですから。となると、住宅の建設ラッシュが起こり、住宅価格も少しずつ上昇してます。こう聞くと、「羨ましい」と思う人が多いとは思いますが、「本当にそれで大丈夫なのかな?」「いいのかな?」と思ってしまいます。実際、住宅価格が上がることで関連品の価格も値上がりして経済が回っていくのであればいいのですが、今のところはうまく回っていません。

借りたら元金より、返済額が減る。これ、借金に対するモラルハザードにもなると思うし正直未知の世界です。お金があり余ってるなんてことはないでしょ?だけど、金融緩和によって実は世界中でお金がジャブジャブ余っているわけです。その余ったお金はより儲かる運用先を探してます。マイナス金利でお金を調達しても、それより少しマイナス幅が少ない金利で人にお金を貸せば儲かるわけですよね。

いったい今後の経済はどうなっちゃうんでしょうか。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年10月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。