売れるビジネス書の特徴とは?事例から導かれた要件とは?

尾藤 克之


「世の中に埋もれている優れた本を発掘すること」を目的に、2013年から書籍紹介記事(別名:ブックルポ)を公開している。書籍紹介はいくつかのサイトでおこなっているが、今回、これまでの情報をもとに分析を試みた。

対象としたのは表1のとおり1194冊(新人595冊、2冊目以降の著者の作品が599冊)。6年前からの集計になるが、明らかに整合性がとれないものは除外した。また、単行本のみを対象とし、文庫、新書、写真集、詩集などは対象から除外している。情報を精査するにはかなりの時間を要することから結果の一部を公開する。分析ソフトはSPSS。

結果から導きかれた結論

ここでいくつか情報を整理したい。レベル4以上で紹介した書籍の重版率は70.6%である。そのなかで、ネット記事(ヤフーニュース等)でアクセスランキング上位に入るなどの高アクセスを記録した場合の重版率90.1%である。

レベル3以下での重版率45.8%である。アクセスランキング上位に入るなどの高アクセスを記録した場合の重版率55.6%である。レベル4以上(80点以上)の重版率が高い。

レベル4以上の作品で新人著者が重版する確率57.1%、2冊以上出してる著者の重版率は80.1%である。レベル3以下の新人著者が重版する確率は30.9%、2冊以上出してる著者の重版率は60.6%である。

また、レベル4以上で重版した本の平均価格は1414円(1527円/税8%、1555円/税10%)、レベル3以下で、重版した本の平均価格は1321円(1426円/税8%、1453円/税10%)である。約100円の開きがある。

筆者は、これまで、「税込み1500円を超えると売れにくくなる」という仮説をもっていた。この価格帯になんらかの要因があるとの仮説を立てることができるが本稿では検証まではおこなわない。

次は(表3)、どのような因子が重版に影響を及ぼすかの分析である。プロマックス回転による主成分分析では、PVと結果の相関、価格と結果の相関が高いとの結果になった。

どの程度のPVが必要になるのか、効果的な媒体は何か?などお聞きしたいこともあると思うが、本稿では検証まではおこなわない。

なお、現在、ビジネス書の重版率が10%といわれているので、記事で紹介した本は非常に高い数値だったと判断することができる。

「出版社が売れ筋の本を送ったので高くなっている」「著者が著名人で売れることは間違いなかった」「記事の力が影響を及ぼした」などさまざまな意見があると思うが、本稿では要因分析まではおこなわない。これらの情報をどのように読み解くかは皆さま次第である。

2つの事例紹介

記事の効果により売れた事例を紹介したい。『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』(あさ出版)は現在12万部を超える大ヒットを記録している。本書は出版前に編集者からプルーフ版をいただいていた。ニーズの確認をしたかったので、出版前に紹介をした。初投稿でYahoo!ニュースで2位のアクセスを記録した。2回目の投稿では1位を記録した。筆者からは、確実にニーズがあることを編集者に報告した。

過労死やパワハラが問題になっていた時期なので、社会的な影響も鑑みたうえで記事を投稿した。半年で15回、最終的には20回投稿した。Yahoo!ニュースでのアクセスは、1位3回、3位以内14回を記録した。結果的に、ネット記事の効果で他メディアに波及するきっかけとなった。この手法は、本が売れないいまの時流にもあっているよう思う。なお「特設サイトのURL」を記しておく。

次は、評価と実態とが乖離した事例を紹介したい。それは、『習慣が10割』(すばる舎)である。筆者は、73点と評価した。これは「レベル3」だからほぼ平均点に近い。理由としては著者の主張する習慣を形成するコンサルティングにピンとこなかったためである。

この作品は現在7刷りを超えている。記事は売上の予測をするものではないが、ここまでの乖離は失当である。著者の吉井雅之さん、すばる舎にお詫びしたい。

付随事項

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尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※14冊目の著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を出版しました。