「このハゲー!」だけじゃない!常態化した「公開パワハラ官僚恫喝」議員たち

田村 和広

森ゆうこ議員による質問パワハラ通告問題は論点豊富だが、議員による人権侵害と官僚に対するパワーハラスメントは特に重要なテーマである。人権侵害では、支持層へのアピールのために国会中継される質疑を利用して、原英史氏個人の名誉を毀損する「捨て台詞」をNHKから配信させたことは「放送事故」級の悪事である。国会議員の免責特権という言論の「神の楯」で保護された身分の悪用だ。

参議院インターネット中継より:編集部

しかし、たまたま今国会だけ人の道を逸脱したわけではない。森議員に限らず一部の野党議員によって、実は立場の弱い人間(官僚)に対して、冷酷残忍な精神的拷問、つまりパワハラが常態化しているのだ。誠に醜い姿である。

今回はいくつかの論点の中から「議員によるパワーハラスメント」をテーマとして、議員による官僚への恫喝的威圧的な業務執行についてフォーカスしたい。

日常的に官僚を恫喝する国会議員たち

まずは新聞(のサイト)で恫喝議員を探せば、

政府全体の見解を示せと言ったじゃないか!」

18日の調査チーム会合では、官僚を怒鳴りつける声が国会の廊下まで響いていた

質問通告めぐり「漏洩」と“逆ギレ”、官僚“犯人捜し”に走る野党」(産経新聞ウェブサイト2019.10.21より)

などがすぐに見つかる。続けて動画を探すと、

舟山康江議員:これをだって、あれですよね、これほんとに、変な話ですよぉ。「どういう指摘があったのか教えて欲しい」と言ったら、そこでも恫喝してるじゃん!(7:55)

いや、恫喝しているのは今そこで、舟山議員御自身ではないか…。

森ゆうこ議員:保存期限いつまで?あ、まだある。廃棄、するなよ。フフッ(22:50)

官僚:…(凍り付いたのか、無言。)

「氷の微笑」、映画は素晴らしかったが、この動画のそれは悪寒が走った。

(以上、「国家戦略特区WGにおける「ヒアリング隠し」について [農林水産政策懇話会(有志の会)第29回会議]参議院議員森ゆうこ【動画】2019/06/21」より筆者文字起こし、太字は筆者)

「廃棄するなよ」と恐ろしい台詞の直後、反り返って肘を隣席に載せ、官僚に恐怖感を与える森ゆうこ議員(右白ジャケット。左上のピンクスーツで腕を組むのが舟山康江議員と思われる)

他にもインターネット上で同様の映像は豊富に見つけることができるが例示はこれくらいにしたい。

見ているうちに自分が責められているような気がしてきて、気分が悪くなってしまう動画である。だが森議員らは自分達で公開しているということは、これはアピールしたい「手柄」と認識しているのだろう。なんという感性の持ち主であろうか。恐怖と嫌悪感しかもたらさないが、支持者にはこれが快哉を叫ぶような事例だということか。

百歩譲って「戦略特区は悪いことをしているに違いない」という彼女たちの「信念」に配慮しても、だからと言って実務を担っている官僚たちを精神的に虐待しても良いという大義名分にはならない。

人として、何をやっているのかわかっているのだろうか。

偉い官僚の不祥事はあったが

古くは風俗要素の強いしゃぶしゃぶ店の利用、最近では天下りあっせんに関与し「貧困調査」と称して風俗店に入り浸った文部次官や我が子を医学部に不正入学させた官僚、酔って民間人の記者にセクシャルハラスメントをした財務次官など、確かに行状の宜しくないエリート官僚は存在する。しかし、そのような不埒な人員の比率は決して高くないはずだ。

多くの真面目で優秀な公務員が日本を支えており、国会議員と仕事をする若手官僚諸氏もその一員である。不祥事を起こした幹部がいたからと言って、現場を支える官僚の人権に配慮しなくて良い理由にはならない。

マスメディアの煽情的報道も背景

議員による官僚へのパワハラが絶えない背景の一つに、マスメディアの偏向報道もある。殊更にスキャンダラスな不祥事の報道を続けることで「政府・官僚=悪い奴」という不正確なイメージの維持固定に努め、「国を糾弾する野党議員は国民の味方」という歪んだ勧善懲悪ストーリーを配信することで購読料や視聴率を稼ぐのはいい加減やめた方が良い。

「天下りあっせん」が疑われる人物として追われた前川喜平氏を、政権批判に使えると見るや一転「巨悪に抗う正義の人」扱いするなど、倫理的にも論理的にも破たんしている営利に貫かれた低い志は、かなり知れ渡っており見通しは暗い。

質問通告問題は自業自得

台風接近の状況で質問通告が遅れ、官僚と思われるアカウントから遅れている状況が外部に伝達されたのは、彼らをいじめてきた野党議員らへの積年の恨みの発露でしかない。ようするに自業自得である。この際徹底的に、日常化している官僚いじめの悪行を晒されるがよい。

その上で、できることなら与野党議員諸氏は、この流れを「国会改革」という前向きな方向のエネルギーに変換して欲しい。現状、多くの議員が国会を単なる「自己アピールの場」としてしか見ていないらしいが、それは残念な状況である。

確かに自分の行動をも厳しく律することになるだろうが、国会改革こそがまさに「身を切る改革」にもなり、給与減額などの自己アピールよりも桁違いに大きな意味を持つ。もし改革ができれば、今回の腐臭漂うパワハラ通告問題も、反面教師的な意味だけでなく日本本来の発展につながる「幸いな出来事」にまで昇華できるだろう。

鍵を握るのは国民民主党・玉木代表

「質問通告漏洩」「漏洩者特定」など的外れな主張をする一部議員の活動に比べて、玉木雄一郎代表は一貫して妥当な対応を表明している。ところが、党員たる森議員等は全く代表の方針など眼中にない行動をしている。この原因に思い当たるところはあるが論点が拡散してしまうので今回は論じない。

国民民主党サイトより:編集部

党として所属議員の処分という形で第一アクションを起こせるのは、玉木代表である。そこから着手して与野党ともに協力しての国会改革への流れにつなげられる可能性があるのではないか。幸い、「一部の議員にはあきれるが、玉木代表たちのように適切な行動ができる議員は、変な議員たちとは決別すべきだ」という見方も国民の中にはある。今ならば実現可能性は十分ある。ピンチをチャンスに変えて欲しい。玉木代表に期待する。

「このハゲー!違うだろっ!」元祖パワハラ議員は、二度と国民に選ばれなかった。

田村 和広 算数数学の個別指導塾「アルファ算数教室」主宰
1968年生まれ。1992年東京大学卒。証券会社勤務の後、上場企業広報部長、CFOを経て独立。