新帝陛下御即位、中東海域への自衛隊派遣など

石破  茂 です。

今週22日火曜日は即位礼正殿の儀、25日金曜日は饗宴の儀と、新帝陛下御即位関連の儀式に連なる光栄に浴しました。当日は生憎、風雨共にかなり強い悪天候だったのですが、午後1時からの儀式が始まると風雨も弱まって晴れ間さえ覗くようになり、人知を超えた皇室の有り難さを感じたことでした。

首相官邸YouTubeより

英国皇太子やドイツ大統領、中国国家副主席、韓国首相など各国からの賓客も多く訪れておられましたが、「唯一の同盟国」アメリカからは、正副大統領など多くの要人がウクライナ問題をはじめとする諸案件への対応でよほど多忙であったのでしょう、チャオ運輸長官が参列しておられました。先帝陛下(上皇陛下)のご即位の際は確か副大統領が参列しておられたと記憶しています。

どなたであれ参列いただけるのは大変有り難いことですし、トランプ大統領は既に新帝陛下最初の賓客としてお迎えしていること、アメリカには権威の象徴的な王族や大統領職が存在しておらず、さりとてクリントン氏やオバマ氏など民主党の前・元大統領というわけにもいかなかったであろうこともよく承知していますが、少しく残念な気がしたのは私だけでしょうか。

国家の慶弔時における外交はまさしく神経を最大限に使う、極めて難しいものであることをつくづくと思います。

政府として中東の海域に自衛隊を派遣する方向で検討を開始したことを受けて、自民党内では様々な議論が展開されています。

アメリカが提唱する「有志連合」には参加せず、防衛省設置法に定められた「調査・研究」を法的根拠として護衛艦(もしくは哨戒機)を派遣し、情勢の変化によっては海上警備行動へ切り替えることも視野に入れている、というのが政府の立場のようです。

アメリカの顔を立て、友好国イランの立場も尊重するという、まさに「総合的判断」に基づく苦肉の策であることはよく理解できますが、2001年9月、米国同時多発テロ直後に中東海域に向けて横須賀から出撃する米空母キティホークに護衛艦が随伴した時に「調査・研究」が法的根拠とされたものとはいささか状況が異なるのではないでしょうか。

収集した情報は当然アメリカに提供することになるはずですが、「有志連合には参加しない」ことをどのようにして担保するか。派遣される海域に国際紛争の主体たり得る「国または国に準ずる組織」が存在し、そこにおいて武力による争いが発生した場合にどのように対応するのか。1999年に初の海上警備行動が下令された能登半島沖北朝鮮不審船事案とも相当状況は異なり、遭遇することが予想されるのは不審船などではありません。

過去PKOに参加したり、インド洋やイラクにおいて自衛隊が活動したりした際には、国連決議を派遣の正当性の根拠としたのですが、今回それが存在しないことをどう考えるか。整理しておかなければならない問題は山積しています。

自衛隊法自体が「やってもよいこと」を列記した警察法的「ポジティブ・リスト」形式になっていることが問題の根源にあり、この機会に文民統制の在り方と併せて「自衛隊とは何か」を明らかにすべきものと考えます。

「自国の船は自国で護るのが当然」というのは確かにその通りですが、そもそもイラン核合意からアメリカが一方的に離脱したのがこの海域に危険が生じたとされる発端ではなかったのでしょうか。これにはイスラエル、サウジアラビア、さらには北朝鮮、中国など様々な国の思惑が絡み合っており、極めて複雑な問題ですが、日本としての立場を不鮮明にしたままでよいとも思われません。

菅原経済産業大臣が辞任し、梶山弘志先生が後任となりました。

選挙区の方には、何かを差し上げることもいただくことも違法になることは明らかです。しかしながら、自分自身や親族の慶弔時はお志を頂戴し、一方で大変お世話様になった方にも、自分が出席できない場合には世間の常識の範囲内のお返しもできないという、ある意味「義理を欠く」ことが政治家の在り方なのか、慶弔時の対応はいつもどこか心苦しいものがあります。

週末は、26日土曜日に自民党茨城県連地方政治学校で講演(午前10時・自民党本部)、麻布大学大学祭で講演(午後2時・麻布大学・相模原市)、日本経済研究センター・日本国際経済研究所主催「富士山会合」夕食会(午後6時・都内)、という日程です。

都心は強い雨の降る悪天候の金曜日となりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2019年10月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。