本を出版したい人が増えている?著者にとって必要なこと?

尾藤 克之

全国出版協会によると、2018年推定販売金額は前年比5.7%減の1兆2,921億円で14年連続のマイナスとなることが明らかになった。

児童書、ビジネス書が前年並み、文芸、実用、文庫、新書など主要ジャンルがマイナスとなり前年を下回っている。これは、市場のピークとされる、1996年の2兆6,563億円から約6割に落ち込んだことを意味している。

活性化するビジネス書市場

市場は斜陽ではあるものの、出版希望者は増加傾向にある。とくにビジネスを指南するビジネス書の市場は活性化している。サラリーマンや主婦の書いたビジネス書がベストセラーになるなどプレゼンスの高さに注目が集まっているのである。しかし、商業出版は狭き門。出版社にとって投資になり多額の費用がかかるためである。

出版を実現するには、投資分の回収と、さらに利益が見込めると思わせることが必要になる。最近では、商業出版スクールがコンサルが乱立している。出版を保障していないことからトラブルが多い。国民生活センター(所管は消費者庁)では、早くから注意を促がしている。出版形態は明確な定義付けが困難ではあるが、費用がかかるものを「自費出版ないしは共同出版」と位置づけている。

出版後の販売ルートは書店のリアル販売、amazonなどのネット販売に分類される。このなかで売上に影響を及ぼすのが書店販売。次の3つの展開が存在する。平積み、面陳、棚差しである。「平積み」とは表紙を上にして陳列する方法。売れ筋や新刊が中心になる。「面陳」とは、本を立て表紙を見せる方法。「平積み」「面陳」に漏れた本は、「棚差し」によって、棚で背表紙を見せて陳列する方法がとられる。

なお、筆者は価格が売れ行きにかなりの影響を及ぼしていると考えている。テレビに頻繁に出演しているような人を除き、ビジネス著の著者は一般的には無名に近い。表紙やタイトルの影響もあるが、同様に購買に影響を与えているのが価格になると考えている。今回、献本された本をベースに1000円~1700円の単行本を対象にして分析を試みた。

著者にとって必要なこと

その結果、重版した本を精査すると、平均1393.1円であることがわかった。筆者は「税込み1500円を超えると売れにくくなる」という仮説をもっていたが、概ねこの結果を照射した。1393円(定価)、1504円(税8%)、1532円(税10%)になるが、どのように解釈するかは皆さま次第である。

標準偏差は95.7(小数点1以下切り捨て)。1393.1円を頂点に、1297.4~1488.8円に68%が存在する。売れ筋の約7割がこの価格帯に集中しているということである。標準偏差の95%ルールを適用すると数値が広くなるため、68%を参考にしたほうがいいだろう。

標準偏差は、エクセルのSTDEVP関数を使用すれば一瞬で計算できる。得意な方はお試しいただきたい。筆者の分析はかなり大雑把なものだが統計解析について深く理解したい人があれば専門書を一読されたい。

いまや、重版率は1割とも言われている。著者になる人は、発信力を高めることと、応援されるネットワーク形成も必要になる。筆者が、いずれセミナーで話したい内容。それは「出版業界をおおっぴらにした話」かもしれない。

尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※14冊目の著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を出版しました。