疑心暗鬼な株高

日本の株式市場が堅調です。遂に23000円の大台も突き抜け、昨年10月の24000円越えも射程距離に入ってきてたように感じます。この株高を演じているのは外国人投資家で国内機関投資家は売りに回っています。日本の株式市場が盛り上がっているのは日本に理由があるのではなく、アメリカの株式市場が堅調でリスクオンというスタンスが背景のようです。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

特に米中貿易交渉に一定の決着が見込まれること、さらにファーウェイ制裁が一部解除になるとみられていることは市場にとってはプラス評価になるでしょう。

話はちょっと外れますが、ファーウェイをどう評価するか、であります。アメリカは情報が筒抜けになるというリスク、および異様なスピードでファーウェイ構築網が地球上に張り巡らされたことへの危機感が背景にあり、制裁に踏み込みました。言い換えるならそれほど高い技術を持った企業であり、今や、アメリカ企業でも太刀打ちできないレベルにあるといえます。日本はアメリカの指示に従っていますが、地球ベースでみるとアメリカ追随国はごくわずかでほぼファーウェイ包囲網となっています。また、アメリカによるファーウェイへの制裁は同社が独自技術の開発を促進させたという面もあります。

話を戻します。堅調な日本株は本当に堅調なのか、これが今日のテーマです。そしてファーウェイの例を述べたのは日本は独自技術や世界から注目を集める開発能力があるのか、であります。

日本企業の7~9月期決算は今のところ、まずまずといったところです。日本の得意技であるコストカット、経営効率の改善などで利益を確保したところは多かったと思います。ですが、これは経営の技術的要因、つまりドライブテクニックであります。とても大事なエレメントではありますが、会社が爆発的に伸びるためには独自色が出なくてはいけません。外から見る私にはここが最近感じられないのです。

一言で言うなら日本企業は要領よくうまくまとまっているけれど粗削りながら突進していくタイプの企業が見られなくなった、ということでしょうか?これが私にとって今の株式市場に対して疑心暗鬼になるその理由なのです。

論文数は大きく減っています。特許も米中に次ぐ3位ではありますが、かつての勢いは感じられません。ではM&Aはどうか、といえば19年上半期の日本/日系企業による海外企業の買収件数は86件と前年同期比19件増となっており活発なように見えます。が、大型案件が非常に少ないのが特徴で日本ペイントの豪州企業買収(3005億円)がトップです。ここ数年、兆円単位の買収が続いていたのに比べればずいぶん小粒になった感があります。

もちろん世界で勝負できる企業はたくさんあります。ソニーや東レといった企業が持つ技術力は注目に値します。が、とても少なくなった、そんな気がするのです。

年末に向けて堅調な株価は期待できるかもしれません。株価があと1000円ほど上がれば1991年以来の高値更新になります。ほぼ28年ぶりとなるハレの舞台は手が届くところにありますが、それが日本経済の実力によるものなのか、低金利、金融緩和とアメリカの株価に踊らされていつの間にかおこぼれ頂戴を喜々とするべきか、悩めるところであります。

日本のもつ技術や能力は水平展開できる余地が相当あります。が、多くの日本企業の海外進出は出やすい東南アジアやインドに向かっています。これは技術を下流に向けて横展開する形です。が、日本はもっと欧米で勝負する努力をすべきだと思うのです。ある意味、一番厳しい競争社会の中で切磋琢磨する企業が世界を制覇していくことになるでしょう。もっと強い成長ビジョンが日本企業に備わらないとどんな株価になろうと砂上の楼閣になりかねません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年11月6日の記事より転載させていただきました。