今週のメルマガ前半部の紹介です。先日、SNS上でちょっとしたまとめが話題となっていました。
【働き方】とある経営者が語る「大卒で2010卒くらいからもう違う人種になってきた」らしい「個人としてどう思うかで動くようになってきている」
「東大生が霞が関や大企業に行かなくなっている」といった話はよくメディアにも取り上げられますが、普通の日本企業に就職するごく普通の新人の労働観もまた、ここ10年ほどで大きく様変わりしています。
筆者自身、学生から「プライベートがしっかり保証される業種はどこですか?」といった質問をしょっちゅうされますね。90年代もそういう質問をする人はいましたけど、言っちゃあなんですが「明らかにぱっとしない人材」ばかりでした。
でも今は「コミュニケーション能力も一定の社会経験もあって、普通に就活すればどこの大企業でも内定取れそうな人材」が普通に上記のような質問をしてきます。
彼らはどう変わったのか。組織は彼らをどうマネジメントすべきなのか。良い機会なのでまとめておきましょう。
別人種になったというより昭和の夢から覚醒した感じ
いつもは結論から入るんですが、今回はちょっと変化球ということで昔話から入りましょう。
筆者の知っている範囲でいうと、90年代の東大生の就活はおよそ以下のようなパターンでした。
1.人気業種の業界大手から3番手くらいまで受ける
2.各業種の業界大手を受けて回る
はい、これだけ。業界はだいたい都銀、マスコミ、商社とあとはインフラ系が中心でした。もちろん全員とは言いませんけど8割くらいはこんな感じでしたね。入社後も何か具体的な仕事のイメージがあるわけではなく、“総合職”として与えられた仕事は何でもこなし、その組織のメンバーとして一体化するイメージです。
だからこそその組織が一流で安定していることがとても重要だったんですね。「個人としてどう思うか」の対局で「周囲からどう思われるか」が重要だったと言っていいでしょう。
まあこれは学生が悪いわけではなく、企業側も具体的な仕事内容は一切見せず、職種別採用もインターンもなかったわけで仕方ない面もありますが。
で、これが現在どう変わったのか。「周囲からどう思われるか」というのが急速に薄れ、かわって「個人としてどう思うか」が主流になってきていると筆者も感じます。
なぜか。単純に「組織のメンバーとなって一体化したって何にもいいことないじゃん」というのがバレちゃったからでしょうね(苦笑)
超人気企業に入っても20代で過労死したり。組織のために20年以上滅私奉公しても畑違いの事業に配置転換されて年収3割カットされたり。50代で早期退職募集に応募するまで何回も圧迫面談やられたり。
正直、筆者が学生だったとしても「転勤や残業と言った滅私奉公と無縁な、プライベートがしっかり保証される業種ってどこですか?」と聞きたい気分になると思いますね。
では、そんな彼らの変化をどう評価すべきなんでしょうか。「お前らはわかってない」と根性から鍛えなおすべきなんでしょうか。筆者はむしろ「昭和の夢から覚めて正常化した状態」とプラスにとらえています。
本来、労働者は企業に対し、労働に対する対価である賃金を受け取る以上の関係ではないはずで、出資者でもないのに会社と一体化させる方がどうかしてるんですね。個人的には「従業員は家族だ」というのと「過労死するまで働け」というのは表裏一体の歪んだ価値観だと考えています。
そういえば近年、東芝や神戸製鋼、オリンパスといった大企業が20年以上にわたって不正を隠してきた事実が発覚しましたが、ああいうのをやったのがまさに「組織と一体化しちゃったオジサン」なわけです。
【参考リンク】神戸製鋼「データ改ざん」最終報告 不正を招いた“製造業の病理”は何か?
少なくとも「仕事とプライベートは切り分けたい」という新人が、会社のために不正行為に関与することはないでしょう。
以降、
若手を引き付けるマネジメント
キャリア志向の強い若手にはプラスαのマネジメントを
会社と個人の正しい距離感とは
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Q:「組織として従業員をどう教育すべきでしょうか」
→A:「とりあえず自分でスキルアップしろよとケツを叩くことでしょう」
Q:「今後は労働市場エリートとそうでない人材の間で格差拡大するのでは?」
→A:「格差が能力に即したものであるならばそれは健全です」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2019年11月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。