しょんぼりした空気を換えたいな

国際ランキング「ベスト・カントリーズ」で、日本が総合第2位に選ばれたという報道がありました。
安定性、将来性などが評価されたようです。
「日本は「第2位」“世界で最高の国”ランキングで1位をとるには?」
https://courrier.jp/columns/162044/

1位はスイス。
成熟した社会、金融の発達など「安定した開かれた国」という評価のようです。
3位カナダ、4位ドイツ、5位イギリス。
アメリカはトランプ効果で信頼性やリーダー性を落とし27位と低迷。
中国はパワーや将来性で上昇するも16位。

日本は高い評価を得ています。

(写真AC:編集部)

しかし、いつもの、いやな情報もあります。
ほとんどの国で、自国に対するイメージが他国からのイメージを上回っているのに対し、日本は逆で、他国が日本をよく思っているのに、日本は自国を素晴らしいと感じていない、という結果だそうで。

自己肯定感問題です。
いつもの、しょんぼり感。

国際調査では「最も創造的な国は日本」という評価をいただきながら、「自分は創造的か?」という問いに圧倒的に最下位の日本。
「創造的だけど創造的じゃない日本」
http://ichiyanakamura.blogspot.com/2017/05/blog-post_22.html

自分は創造的ではなく、創造する意思も可能性も見出していない。
ネットの力も重視しておらず、旧来の暗記型教育でよいと考える。
という日本の若者。
「[閲覧注意] いかーん、日本の若者は創造力を欲しとらん!!!」
http://ichiyanakamura.blogspot.com/2017/07/blog-post_18.html

いつごろからこんなに肯定感が低くなったのかわかりませんが、かつてはそんなにしょんぼりしていなかったんじゃないか。
わたくしコレ、沈んでいた平成の30年が臭いとにらんでおります。
つまりこのところの空気の問題ではないかと。
でっかい令和の換気扇 置いて、空気換えればいいのではと。

ところで、オーソン・ウェルズが「第三の男」で発するセリフ。
「スイス500年の平和が何を生んだ?鳩時計だよ」。
MITメディアラボ創設者ニコラス・ネグロポンテが「終わった国」とつぶやいたことがあります。スイスのことを指して。
ふとした話の流れで発したセリフですが、強く残っています。

ネグポンの言う「終わった国」は、長い歴史のうちに成熟はしたけれど、現代になってさしたるイノベーションもなく、沈んだわけではないが輝きを失った、という意味でしょう。
彼は若いころスイスの学校にも通っていたから、情を込めてのセリフだと思います。

世界経済フォーラムの調査で、スイスは昨年まで競争力が9年連続で1位。
だから決して終わってはいないのでしょう。
彼が終わったと呼んだのは、経済だけでなく政治・社会・文化を含む総合面でのプレゼンス低下を指したのではあるまいか。

でもぼくの耳には、日本を刺しているように響きました。
だってぼくに言ったんだもん。

デジタル化に乗り遅れ、終わりつつある。
停滞し、沈んでいる。
1985年にメディアラボを創設した際、多くの資金を日本企業に頼ったネグポンも、日本をそう見ていたに違いないので。

ところが、今回の調査ではその2国がワンツー・フィニッシュです。

ざまあみろネグポン。

成長というより成熟。
ダイナミックより安定。
世界は、「終わった国」に未来を見ているのかもしれません。
だけど、やはり、自己肯定感を高めないと、しょんぼりしますよね。

どうしようネグポン。

IoTやAIはものづくり力を発揮するチャンス再来、高齢化や災害などの課題先進国としてのチャンスも見出せるのですが、科学技術で改革をといった機運は薄い。
アメリカを追ったりアジアと共進したり、フランスやオランダのように老獪に振る舞ったりする意思も弱い。

一方で、アメリカやヨーロッパのリーダーは、日本となら組めると言うし、中国ともこのところ悪くない。インドとも。
安定してて悪さをしない、現れるのはピカチュウやドラえもん、というポジションは、きっと世界の中のいいやつなのです。

来年はみんながぼくたちを見つめます。
ぼくらもしょんぼりしていないで、空気を換えて、ニコニコと顔を外に向けましょうや。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年11月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。