投票日まであと2ヵ月となった台湾総統選、野党国民党は11日、韓国瑜総統候補と共に選挙戦を戦う副総統候補に張善政元行政院長を正式に決定した。副総統候補には朱立倫前新北市長が有力とみられていたが、韓陣営によれば、朱氏側からその考えはないと回答があったという(参照:中央社フォーカス台湾)。
喜楽島連盟の呂秀蓮が規定の署名数を集められず立候補を断念し、筆者も蔡VS韓との一騎打ちの総統選とみたが、12日に親民党が大ベテランの宋楚瑜主席(77)を引っ張り出した。一時期、親民党からは国民党の古参立法委員の王金平が立候補を模索していたが断念したようだ(参照:中央社フォーカス台湾)。
最後の台湾省長だった宋楚瑜は、民進党陳水扁が初めて政権を奪取した2000年の総統選挙に、国民党を離れて無所属で立候補し、結果として国民党票を割って国民党の連戦候補の足を引っ張った。中国との繋がりが強い人物と目されている宋氏の今回の立候補も韓国瑜にマイナスに働くと思う。
その韓候補とペアを組むことになった張氏は馬英九政権で行政院長(首相)だった。中央社は張氏が「学界や政界、産業界で豊富な経験があり、韓氏の説明が足りない部分を補える能力も持っている」としている。高雄市政では何かと味噌をつけている韓氏に打って付けということだろう。
そういえば韓市長を支える三人の高雄市副市長も、葉匡時が元交通部長、李四川が元行政院秘書長、陳雄文が元労働部長で、何れも閣僚として国民党馬英九政権を支えていた人物だ。02年に国民党立法院を辞してから野にいて政党色を薄めて市長となった韓氏だが、結局は国民党に丸抱えされている。
そこで決定が待たれる民進党の副総統候補だが、蔡英文と党内予備選を争った頼清徳前行政院長を待望する声が大きい。報道によれば民進党は16日に韓氏のお膝元の高雄市で、蔡英文陣営の選挙対策本部を立ち上げる予定とされる。それに合わせて今週に副総統候補が発表されるだろう。
昨年11月の総選挙で惨敗し低迷していた蔡総統の支持率をここまで押し上げた香港の抗議デモは、ここへ来てとうとう死者まで出し、武装警官によるデモ隊への発砲も頻発しつつある。これを受けて蔡英文総統は11日、北京と香港政府に対してフェイスブックでこう呼びかけた。
銃弾ではなく、民主主義や自由への約束で香港の人民に応えるべきだ。(香港)政府は丸腰の人民に発砲すべきではない。発砲は問題を悪化させるだけだ。対話でこそ問題を解決できる。
このような香港の出来事を目の当たりにし、台湾の有権者は改めて北京の恐ろしさと台湾の自由や民主主義のありがたさを実感しているだろう。投票行動に大きな影響を及ぼすに違いない。
高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。