東京モーターショーに前回比7割増の130万人も集まった、と報じられています。クルマ離れのこの時代になぜ、と思う方も多いと思いますが、私の分析ではこれは「トヨタモーターショー」としてコト消費の層が押し寄せたと考えています。よく頑張ったともいえますが、クルマそのものに目線が行ったかは売れ行きのみぞ知る、であります。自動車各社の決算はトヨタ以外は厳しい結果のようです。豊田社長のパフォーマンスに女神が微笑んだかも、ですか?
では今週のつぶやきです。
新世代経営者の苦悩
7-9月決算もいよいよピークを過ぎようとしていますが、日本で一般に知られている新世代の創業経営者が率いる企業が大苦戦しました。ソフトバンクGの赤字はここでも取り上げましたが、それ以外に楽天、メルカリ、ミクシィ…とゾッとするほどの赤字、ないし大幅な減益を記録してしまいました。
それぞれ理由は違います。あえて似ているといえばソフトバンクと楽天は投資先の評価損であり、バブルが弾けたといってよいでしょう。ただ、楽天は限られた人だけを対象に実験的に始めた携帯事業も非常に苦戦しており、今後、三木谷氏の描く「RAKUEN」が生み出せるのか、正念場でしょう。
メルカリは競合も増え、創世期のブームが一段落しつつある中、注力するアメリカでの事業がさっぱり花咲かず、という苦悩が見て取れます。ミクシィはモンスト頼みで一本足経営になっていたということかと思います。共通しているのは創業時の事業から次のステップアップが思ったようにうまくいかない点でしょうか?彼らは焦り、急ぎすぎるきらいがあるし、資金力の武器に偏重しすぎる気がします。足元が浮足立っていないでしょうか?
声を上げる若者たちの背景
過激化する香港のデモあるいはグレタ・トゥーンベリさんの「金曜日は学校に行かないで気候変動ストライキ」に賛同する世界数百万人の学生や生徒たちを見ていてなぜ、若者は立ち上がったのだろう、と考えています。背景の一つは政治が自分たちの声を反映していない、という社会への不満だろうと考えています。
私が比較参照したいのは日本の安保、アメリカのベトナム反戦デモ、それに89年天安門事件です。これらも若者が主導した点では似ています。そして政府への声を皆が集まってカラダを張って戦いました。もう一点はある推論に対して強力な賛同を得る点でしょうか?「我々の自由は奪われる」「このままでは地球環境はダメになる」「アメリカと手を組むなんて」「こんな泥沼戦争で死にたくない」「僕らに自由と民主主義を」でしょうか?これを一種の「カウンターカルチャー」と考えれば物質主義からの離脱と精神的満足度の追求へのシフトととらえられなくもありません。
養老孟司氏の「バカの壁」には地球温暖化の原因が炭酸ガスだとするのは推論の一つにすぎないのにそれを多数の科学者がそうだという声を理由に多数決で断定するプロセスに大きな疑問を呈しています。もしかすると根拠が希薄な推論でもルールを逸脱し、社会と対峙するとなればこれにどう立ち向かうのか、大人の対応にはいつの時代も困難が付きまといます。
「82年生まれ キム ジヨン」
私の目の前に「82年生まれ キムジヨン」の本があります。もちろん読んでいます。
なぜこのフェミニズム的な本を読んだかといえば私には「相手を知るには相手の中に入れ」という考えがあるからです。この本は2016年に韓国で発売され、韓国だけで100万部を売った超話題本であります。(韓国は日本の人口のざっくり半分、そして読者層はほぼ女性と考えればいかに売れたか想像できるかと思います。)そしてその映画版が公開になり、韓国の全映画館の四分の一で上映されるという大ブームを巻き起こしています。
書籍は家父長制度の名残を強く押し出した韓国独特の家族関係や男尊女卑を通じて女性の立場からそれらがどれだけひどいものか延々と訴えるという内容です。個人的感想としては主人公が自己主張を通じた悲劇のヒロイン化しすぎており、男性側からすれば大いなる反論はあるでしょう。私も読んでいて最後には苦しくなりました。
ただ、韓国の儒教的発想からくる男性優位社会、そして父が絶対権力者であるという風習は時代が変わりつつある現在でも程度の差こそあれ、まだまだ強く残っています。知人たちから「父親の言うことには絶対服従」「私の父は金正恩と同じ」と直に聞き出しています。振り上げたこぶしは下せない男社会が生み出す歪みは日韓問題を考える重要な基礎になります。なぜ、この本や映画が話題になるのか、韓国社会を知るには良い題材だと思います。
後記
同じコンドミニアムに住むイタリア人とフィットネスをしながら「この街でうまいイタ飯はどこかい?」と聞けば「ピザやパスタはともかく、リストランテ(ちゃんとしたイタリア料理店)はないなぁ。それより寿司がうまいよ、特にあの炙り寿司!」。このようなコメントはローカルのあちらこちらから聞こえてきます。
彼の言う寿司屋、「Miku」の若い社長はよく知っていますし、巨大なその店舗にも時折かろうじて潜り込んでいます。(いつも超満員という意味です。)寿司に芸術と非日常感、典型的日本食レストランとは趣を変えた店舗デザインのこの店の存在は私にとっても日本の誇りです。こういう誰もまねできない格好いいビジネスをもっと多くの日本の方にやってもらいたいですね。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年11月16日の記事より転載させていただきました。