ウラジオストクのデジタルとアナログ

超ヒマなので、ウラジオストク、行ってきた。
2時間20分。沖縄より近い。
日本語表記は浦塩斯徳。ウラジオ・ストク。
ホンマはウラジ・オストク。
アム(川)、ステル(港)、ダム(堤防)のアムステルダムを、アムスと呼ぶみたいな。
イブサンローランをイブサンと呼ぶ関西のおばはんのような。

ロシアは2回め。
レーニンのバッジはたくさん売ってるけど、スターリンものがありません。
通るクルマを数えたら、100台中、トヨタホンダニッサン三菱スバルスズキ、96台が日本車。
7年前、初めてロシア(モスクワ)を訪れた際と、さほど変わりありません。
前回に記録したことを、再記しておきます。

ソ連といえば、東京五輪重量挙げのジャボチンスキーであり、札幌五輪アイスホッケーでCCCPと書かれたユニフォームの鬼たちであり、モスクワ五輪ボイコット高田選手ナミダの抗議であり、ジンギスカンの「めざせモスクワ」であります。

「犬のこと英語でドッグよ」
「ふうんじゃあ猫は?」
「キャット」
「ドリプシ。ドリプシってママ何のこと?」
「それはねところの名前なの。ソビエトにねドリプシっていうところがあるの。そこの人たちは発酵乳を毎日飲んでいるからとても元気で長生きするのよ」
「ふうんそれでドリプシか。覚えたーっと」

「毎日ドリプシはそこで飲まれている発酵乳に蜂蜜を加えた栄養たっぷりの飲み物なの」
「それでうちのおじいちゃん毎日飲んでるから元気なんだね、ママは肌がきれいだし」
「ま、いやあね、この子」
毎日毎日ドリプシー♪
「とにかくおいしいや!」
(以上、関西ローカル)

ウルトラQ「地底超特急西へ」で、ラストシーン「私はカモメ」というセリフの意味がわからず、テレシコワという人の言葉だとおかあさんがと教えてくれた4歳の記憶。
ところで今気づいたが、このタイトルは「独立愚連隊西へ」に引っかけたのだな。

中学のときコピーしたBack in the USSRであり、中学で習ったボルシェビキであり、高校で習ったトロッキズムであり、大学に並んでいたタテカンのトロ文字であり、ぼくと同じころ活動していたザ・スターリンであります。

上京して最初に八重洲の地下で食ったビーフストロガノフであり、近ごろ解散したt.A.T.u.であり、ユーリ海老原改め勇利アルバチャコフ衝撃のハードパンチであります。彼の世界戦は猫パンチのミッキー・ロークの前座だった!その自殺行為で日本拳闘界は長い冬を迎えることになったことを付言します。

さて今回の目的は、ウラジオストクのデジタルサイネージ視察。
コンソーシアムでもロシア関係者から話を伺っていましたので。
だけど街に特筆すべき映像は見当たらず、バーキンがビル壁をデジタルにするのを見て、アメリカが忍び寄っているのを感じた程度。

ところが、ルースキー島にある「沿海州水族館」を訪れ評価は一変。
たいへんなデジタル+アナログ空間でした。
2016年にオープンした新名所。
ここだけを目当てにウラジオストクに来る値打ちがあります。

タッチスクリーン、映像表示は新しい施設だけに見事で、日英中の多言語表示も備えています。

3D表示の学習施設、ARによる展示、5D劇場(3D映像にイスが動いて風や水を浴びせるやつ)、ふんだんに盛り込んでいます。

それ以上に感心したのは、デジタルとアナログのバランス。大画面での映像と、巨大でリアルな造形物による空間展示です。本気の空間デザインを感じました。

鉄板のイルカショーも、スクリーン表示とのシンクロが見事。

アナログのみの造形も素晴らしく、端的に言っておカネがかかってます。
これ、元とれないだろうなぁ。
飲食は乏しくて、あまり稼ぐ気力はなさそうだし。

ロシアの知人がいます。
MITメディアラボ。
ヘルメットが吐息や汗を感知して、データでレゴの城や人形を動かすシステムをデモする細身で巻き毛の修士学生がいた。
PCにつなげたバットを振ると体の具合がわかるシステムも作っていたが、本人は握りが左右アベコベだ。
おマエ野球やったことないやろ!

その兄ちゃん、ロシアから逃げてきたという。
ロシアじゃ何をしていたの?
「テトリス作った。」
はァ?
調べてみた。ホントだっ た。
16歳でテトリスを作り、そのせいであれこれ怖ろしいことに巻き込まれ、ボストンに流れてきたヴァディム・ゲラシモフ君。
当時あれこれ支援したが、今どうしているのかな。

ノッシノッシ歩く男どもの顔は、ブレジネフだったりコスイギンだったりアンドロポフだったりメドベージェフだったりブブカだったりします。
女性はキッチリやせていて、デブ専の楽園を期待するとガッカリします。
うれしいことに腎臓スープがあったのでいただきました。
以上、報告まで。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。