香港の区議選で民主派が地滑り的勝利となっています。香港で民主派が区議選で過半数を獲得するのも初めてなら投票率が70%を超えるという香港人の今回の選挙に賭ける熱さも伝わってきました。区議選で過半数を取得したとしても香港がどれだけ変われるのかといえば直接的には限られたものにとどまります。しかし、今回の勝利が民主化を求める香港人により勢いがつく公算はあるでしょう。
問題は中国政府がこれにどう対応するのか、であります。
中国は力による弾圧や民意コントロールという手法で13億人もいる巨大国家を形の上で縛り上げています。9割以上が漢民族でありますが、残りの約1割が55の民族で占められています。その民族間闘争を平たく言えばひもで括っている状態でありますが、紐はほどけることもあります。中国の歴史はその紐が結ばれたり解けたりすることの繰り返しであり、時として他民族が力を持ち、侵攻したこともありました。
一方で同じ漢民族同士でも激しくぶつかったのが毛沢東が率いた共産党と蒋介石が率いた国民党でありました。1949年に国民党は台湾に逃れ、その後、現在に至るまで中国と台湾の間には厳しい政治バトルが繰り広げられています。1月に行われる総選挙では中国に一定の距離を持つ蔡英文総統が優勢であり、今回の香港の区議選を受けてさらにそのポジションを固めていくのではないかとみています。
同様に香港も同じ漢民族ながら違うDNAを築き上げてしまいました。英国による99年間の租借は単なる地域の一時的な支配とは違い、人々の発想を変え、民主的でビジネスが繁栄し、英国の影響を受け、英語を操り、金融や貿易を通じて香港人が国際人化していました。
更には97年の返還前に英国連邦の主要国に移住した香港人が各地でビジネスを起こし、政治家を輩出し一部では経済的影響力を持つまでになっています。
中国はそんな香港や台湾を紐で括ろうと躍起になっていました。それでも当初は対岸の火である台湾にその照準を合わせていたものが今は陸続きの香港の鎮圧に翻弄されています。89年の天安門事件のようにするわけにもいかず、アメリカの監視の目もあります。
今起きているのは27年後の中国との一体化とそれに向けじわっと押し寄せる香港の中国化への抵抗であります。これについて私見ですが、中国そのものが変わる可能性を見ています。誰が国家主席であろうともより開かれていく社会の中で「縛る」という国家運営は時代遅れとなるでしょう。共産党が崩壊するとは言いませんが、共産党そのものの立ち位置が変わるとみています。その時、英国連邦のように緩い連携という発想を取り込めば憎悪の関係から相思相愛の関係に転ずることも可能です。
20年後に香港が独立宣言し、それをアメリカが支持するというシナリオだってあり得るでしょう。その時、中国はグループ国としての絆づくりを目指すのがベストシナリオになります。
もちろん、こんなバラ色のストーリーは夢物語と一笑に付されるかもしれません。しかし、世の中がどこに向かうのか、香港も変わろうとしているけれど中国の体制にも軋みが生じるという見方は当然あっておかしくないというのが私の期待するところであります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年11月25日の記事より転載させていただきました。