徴用工は基金が唯一の策だが誰が出すか譲れぬ一線あり

八幡 和郎

徴用工問題については、いっさい日本側が義務を負うべき立場でないが、一方で、パーフェクトゲームも大人げない。相手に細い逃げ道くらいはつくっておいたほうがいいというか、それをしないと、必要以上に解決が長引く。

最高裁勝訴に沸く元徴用工の原告側(KBSより:編集部)

太平洋戦争の終盤、米国側が日本に対し「無条件降伏といっても国体維持は大丈夫」とでも言ってくれれば、日米双方にとって多くの人命が救われただろうということを想起すべきだ。

そこで、アゴラ(「私はこれまでも、徴用工基金を創っても被告企業の拠出は拒否すべき」)や、『ありがとう、「反日国家」韓国 – 文在寅は〝最高の大統領〟である! 』(ワニブックス)でも、日本政府だけでなく、関係の企業もいっさい寄付に加わらないということをもって死守するべきラインにすべきだと書いてきた。

むしろ、まず、媚韓派の人たちが拠出すればいいのである。とくに鳩山由紀夫氏は共和党をつくるよりこっちに出したらよい。朝日新聞や大村秀章知事、在日の人たちや、ゆかりのある孫正義氏なども寄付すればいい。

とくに、在日韓国人の人は、日韓基本条約が否定されたら特別永住者の立場も根拠がなくなるのだから、頑張ってもらいたい。

もちろん、経団連なども補償でなく、日韓友好のためということなら貢献してもばちは当たらない。あとは、被告になっている企業の社長などが個人的に少し出して玉虫色とするのまでは否定しなくてよい。

それから、付け加えておきたいのは、徴用工に朴正煕政権が払わなかったのは、単純に横取りしたということではないことだ。なにしろ、韓国は戦争の被害はほとんど受けなかったが、戦後に、朝鮮戦争で国民のほとんどが甚大な被害を受けた。

それに対する補償などは、やりようもない中で、いわゆる元徴用工に100%の補償などしたら、不公平だという事情があったからだ。

災害のときでもそうだが、誰かが補償してくれる案件だけ補償すると著しい不公平感が生じる。難しい問題で、そのことで朴正煕政権をあしざまにいうのに、私は与しない。


八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授