昨日、アゴラさんに掲載して頂きましたが、日本に来日されたローマ教皇は、世界の薬物問題に心を寄せるローマ教皇世界の薬物問題に強い関心を持たれています。
ローマ教皇は終始一貫して、麻薬の製造元や売人については厳しく取締り罰すべきであり、逆に末端の使用者に対しては、裁くのではなく治療を施すべきという考えを度々お示しになっており、これは、欧米諸国やオーストラリア、カナダなどの先進国の政策と一致したお考えです。
逆に薬物の厳罰化を強めているのは、アジア諸国ですね。
御存知の通り、中国やマレーシア、インドネシア、シンガポールなどでは、売人や製造元はもちろん、場合によっては持っていただけでも死刑が執行されます。
そして死刑は外国人に対してもお構いなし、しかも冤罪を訴える外国人に対しても、
ロクに裁判も開かれぬまま、死刑が執行されており国際問題になっています。
これまでに日本人8人が中国で死刑にされ、マレーシアでは死刑判決を受けた女性が冤罪を訴えています。
なんでも通訳もロクにつけられぬまま裁判が行われるそうですから、無茶苦茶ですよね。
それなのに日本政府は一向に動かない。ひどい話しです。
しかも、今年の1月に中国で死刑判決を受けたカナダ人男性は、当初懲役15年だったのに、突然差し戻し審が行われ、死刑判決を受けたのですが、これはファーウェイ幹部を逮捕したカナダに対する報復措置と言われています。
こうなると人権なんて無視。無茶苦茶です。
フィリピンのドゥテルテだって大量殺人兵器と化し、あの行為をどっかの有名美容外科医が絶賛してましたけど、国際社会の批判を受け、あの残虐行為をやめさせるために、結局、日本が助成金を何十億も出して支援事業をやる羽目になったんですからね。
ホント薬物政策に無知な著名人がいい加減な発言をするのはやめて欲しいですね。
しかも、こうした厳罰化した国で薬物対策が進み、薬物を撲滅できたか?と言えば、結果は皆さんもご存知ですよね?全く減ってなんかいないわけですよ。
むしろ地下経済が潤い、闇組織が栄え、薬物は簡単に手に入る状況にあります。
中国留学中に覚せい剤を体験したという若者にインタビューした記事を過去に書いたのでこちらもご覧下さい。
中国の薬物事情がよくわかるインタビュー
さて、ローマ教皇ですが、これまでに薬物対策についてどのようなお言葉を述べていらっしゃるか、ざっとですが意訳してみたのでご一読下さい。
こちらは私も登壇させて頂いた、バチカンでの国際会議の際のお言葉ですが、
Pope calls for solidarity and nearness to victims of addiction
「カトリック教会は、尊厳を失った人々が尊厳を回復するために、
予防、治療、リハビリテーション、再統合プロジェクト(訳者注:社会復帰プロジェクトと思われる)
を通して依存症の拡大に対処するために、市民、国内および国際機関や様々な教育機関と協力しています。
健康、家族支援、教育を目的とした社会プログラムを実施するために、グループや機関は一体となって取り組む必要があります」
Top Pope Francis’ Quotes About Drug Addiction
「薬物依存症者はそれぞれ、耳を傾けられ、理解され、愛され、
そしてできるだけ早く癒され、浄化されなければならない異なる個人的な歴史を持っています。
まるで彼らが単なる物や壊れた面倒ごとであるかのように、薬物依存症者を分類する不当な行為に陥ってはなりません。」
Illegal drug makers, dealers are traffickers of death, pope says
「単独の政策は役に立ちません。 これは人間の問題であり、社会的な問題であり、すべてがつながっていて、
これらの依存の病状によって傷ついている人々との連帯と親密なネットワークを作らなければなりません。」
Drugs a ‘new form of slavery’, Pope Francis says
「薬物は私たちの社会の心の傷です。社会の中での多くの人々を捕らえる傷。
彼らは奴隷、chemistryと呼ぶ依存への奴隷に陥り自由を失った犠牲者なのです。」
日本は今後、薬物政策で効果をあげた欧米先進国の非犯罪化路線に進むのか、厳罰を貫き、一向に薬物問題を減らすことができないアジア諸国の路線に進む気なのか?
一体どちらの道を選ぶつもりなのでしょうか?
芸能界の末端の使用者に「刑を厳しく!」なんて言っている芸能人もいますが、愛あるローマ教皇のお言葉と、どちらに共感しますか?
この度の、ローマ教皇のご来日に熱狂した日本人。
薬物対策に関する教皇のお考えも、是非知って欲しいと思います。
英語で「POPE FRANCIS Drug」などのキーワードを入れてググってみると沢山記事が出てきます。
是非、やってみてください。
田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト