眠れぬホワイトハウスの主はついに香港人権法案に署名しました。「中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と香港市民への敬意をもって法律に署名した」(日経)というトランプ大統領の声明の意味が今ひとつピンとこないのはいかにも迷いに迷った上での署名だったと言えそうです。
もう一つは感謝祭休日に入る前日の夕方に署名をした点であります。明らかに人々のムードが盛り上がっている中、アメリカ人が喜びそうなギフトをホワイトハウスの主が送る形になりました。(アメリカ感謝祭は今やクリスマスと並ぶほどの大イベントです。)
一方で、わざわざ市場が祭日で一日閉まる前日の夕方を署名するタイミングに選んだのはそのインパクトを見定める「クールダウン」が必要だったからでしょう。それぐらいこの署名は刺激的なのであります。米中の第一段階の通商交渉の締結が近いとされる中で中国を刺激する法案となったからで中国側の出方次第では「リスクオフ」になりかねない非常に読みにくい事態となってしまっています。
もともとアメリカの株式市場は「熱狂感なき高騰」で史上最高値を更新し続けていました。市場参加している私からすればなぜそこまで買われるのか理解に苦しむところがありますし、特定分野が目覚ましく市場を引っ張っているわけでもありません。例えばセールの時期なのにアマゾンは高値更新からしばし時間がたっています。アリババが今日高値更新をしたのと好対照になっています。
世の中は常にいい時悪い時が交互にやってくると考えれば今回の署名は潮目の変化となる可能性は排除できないとみています。
もちろん、香港の民主化を支援するという意味でアメリカは当然のことをしたまでだ、という正論はありますし、十分理解できます。が、市場は実にひねくれており、それをどう理解し、マネーはどこに流れるかという点については必ずしも正論の方向に行くとは限らないところが曲者なのであります。
中国の経済指標が弱めに出ていることで確かに中国の経済運営、そして体制そのものへの不満は出てくる可能性はあります。ただ、中国がそれぐらいのことでへこたれる国ではないことも事実であります。それゆえに市場は中国の反発がどんなものなのか、戦々恐々としているのであります。
株式市場参加者の典型的な悲観論を勝手に想像すると
中国猛反発⇒米中通商交渉中断⇒トランプ大統領への国内農家などからの批判の声⇒大統領選に向け民主党候補者への傾注⇒大統領選で民主党候補勝利
であります。となれば中国はあと1年、通商交渉を引き延ばす作戦に出てもおかしくないのです。
市場は悲観と楽観が激しくぶつかり合う中で相場が成り立っていきます。そして強気の場合は何の根拠もなく勝手に買い上がるのに対して弱気の場合は上記のようなストーリーが作られることが多いのです。だからこそ、1年かけてあげた株価が3日で崩れるということが起きるのです。
ブラックフライディの立ち合いは午後1時までです。ブラックが悪い意味にならなければよいと思っております。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年11月28日の記事より転載させていただきました。