「障害者政策の司令塔」内閣府が電子行政を拒否してよいのか

山田 肇

電子行政に期待している人々がいる。視覚障害者が一例。紙の書類で申請するには誰かに代筆を頼まなければならない。

kakkiko/写真AC

地方公共団体の窓口係員は親切に代筆してくれるそうだが、記載内容は係員に声で伝えなければならず、係員は記載内容を声で確認するため、周辺にいる人々にプライバシーがまる聞こえになる。電子申請なら読み上げソフトを使って自宅で書類を作成できると彼らは期待している。

ディスレクシア(難読症)の人々。文字を読んで情報を取得するのが苦手な彼らは、同じように読み上げソフトの助けを借りている。文部科学省もディスレクシアの子供たちがデジタル教科書の読み上げ機能を使用するのに前向きである。電子申請なら読み上げソフトを使って自宅で書類を作成できると彼らは期待している。

上司に麻痺のある人々。手が動かせない、あるいは震えるという理由で紙の書類の所定の欄に所定のサイズできちんと文字を書けない人々がいる。電子申請ならパソコンを使って自宅で書類を作成できると彼らは期待している。

様々な理由でゆっくりしか書類が作れない人々もいる。彼らは窓口で渡された書類に記入するのが苦手。特に行列のある窓口は嫌い。電子申請を使って自宅でゆっくり書類を作成したいと彼らは期待している。

内閣府には国の障害者政策の司令塔にあたる障害者政策委員会が設置されている。事務局は内部部局にあたる共生社会政策担当の政策統括官である。この政策統括官は、障害の有無や年齢に関係なく暮らせる共生社会を目指して、政府の基本方針を定める役割を担っている。

内閣府が電子行政を拒否するということは、共生社会の実現を目指す司令塔の役割を自ら否定するのに相当する。だから、電子申請の実施について定める省令案への意見を郵送とFAXでしか受け付けないという内閣府の姿勢、障害を持つ人々への配慮のない20世紀型の行政を残そうという姿勢に、僕は怒っている。

関連拙稿:内閣府は電子行政を断固拒否する

山田 肇