ルイ・ヴィトンなどのブランドを持つモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)が、アメリカの有名な宝飾品ブランドのティファニーを162億ドル(約1兆7700億円)で買収すると発表しました。
さらに、LVMHは来年4月に、フランスの1870年にオープンした老舗百貨店「ラ・サマリテーヌ」を7億5000万ユーロかけて、リニューアルするそうです。1000億円近い大金を使ってまで店舗経営をするのは、時代に逆行しているようにも見えます。
なぜなら、世界では「アマゾン・エフェクト(アマゾン効果)」とか「デス・バイ・アマゾン(アマゾンに殺される)」と言われるような、ネット取引の広がりによる小売企業の破たんが当たり前になっているからです。
しかし、日本国内の動きを見ると、ブランドビジネスは別格のようです。銀座では、大規模なブランドの旗艦店が路面に次々にリニューアルオープンしています。松坂屋の跡地に出来た銀座シックスも実はLVMHが運営をしています。良く見ると、入っているテナントはグループのブランド企業がほとんどです。
同じ購入という行動でも、日用品をリアルな店舗で買うのは家事という仕事です。しかし、店内で出されたシャンパンを飲みながらブランド品をあれこれ試着して買い物をするのは娯楽です。
仕事は出来るだけ楽をしたい。その分、娯楽に時間を割きたいというのは、誰にとっても自然な感情です。
LVMHグループが売っているのは、アマゾンで購入されているような、トイレットペーパーや食料品ではありません。ネットで買うよりも、実物をリアルに見て、どれにしようかを楽しみながら選んでいく高級ブランド品です。
ブランドビジネスの強みは、価格競争に巻き込まれることが無いことです。ルイ・ヴィトンのバッグを買う理由は、丈夫で長持ちするからではありません。それがルイヴィトンだからです。そのことにいち早く気が付き、1984年にクリスチャンディオールを買収したベルナールアルノ―氏(写真)のセンスは流石としか言いようがありません。
アマゾンによって世界の小売業は次々と衰退していますが、LVMHはこれからも成長を続けていくことでしょう。経済成長によって豊かな人たちが新興国に生まれれば、彼らが欲しがるものはブランド品だからです。
オンリーワンの価値を提供することで、競争しないビジネスが可能になる。アルノー氏の経営には、ビジネスのヒントがたくさん詰まっています。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年12月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。