好き嫌いではなく、極端に偏った思想が教育現場にあるのは違う!

中田 宏

皆さん「はだしのゲン」って知ってますか?
「はだしのゲン」を小・中学校の図書室から撤去すべきだという議論がTwitterで起こっています。

昭和48年(1973年)から週間少年ジャンプで掲載連載されていた漫画です。私がちょうど小学校3年生とか4年生の頃に掲載されていたので、読んでいましたので私は知っています。読んでいましたけれども、正直私の好きな漫画ではありませんでした。その後、単行本が発売されてからは全国の小・中学校の図書室に次々と置かれるようになっていったわけです。中チャンを撮影しているカメラマンは、学校の図書室に置いてある唯一の漫画だから、手に取って読んだということです。

「はだしのゲン」、舞台は1945年の広島市に住む中岡元(国民学校2年生)の5人家族の物語です。連載当初の主人公は当時の国民学校の2年生、年齢だと7〜8歳で、今の小学校2年生です。私が読んでいた頃も小学校3年生くらいですから、まさに主人公の年齢設定とほぼ同世代でした。さて、この漫画が何で嫌いだったかというと、グロテスクな描写で気持ちが悪かったからです。私がそう思ったように「撤去せよ」と主張している人たちの理由の一つにグロテスクな表現という理由もあります。グロテスクと言いましたけれども、漫画の中には、残虐で猟奇的な場面の絵がたくさん載っています。とは言っても、「グロテスクだから子供に見せるな」というのは違うと思います。目を見開いてでも見るというのも教育の一つでもあるからです。

子供の頃の私はグロテスクだから嫌いな漫画という感想でいいのですが、大人になってから、また社会を考える立場になってからは別の問題を指摘しなければなりません。それは歴史の事実関係としてまた歴史認識として間違ったものが多い点です。
例えば、こんな描写があります。日本軍が「首をおもしろ半分に切り落したり」「妊婦の腹を切りさいて中の赤ん坊をひっぱり出したり」「女性の性器の中に一升ビンがどれだけ入るかたたきこんで骨盤をくだいて殺したり」などです。これら表現はゾクッとくるような気味悪さですけれども、こういった表現が多数あるわけです。しかし、問題はこれらが事実かということです。

実はこれらは中国が日本を貶めるためにプロパガンダしてきた内容そのものであって、事実確認などできていません。

他には、「いまだに戦争責任をとらずにふんぞりかえっとる天皇をわしゃ許さんわいっ」「天皇の奴が戦争をせえと言うたからじゃ」などと、戦争の責任は全て天皇にあるとして、天皇陛下に罵詈雑言を浴びせています。

著者の中沢啓二氏は、漫画とは別のインタビューでこう言っています。

「日本の民間人被害者の80%近くは1945年3月以降に出ている、従って天皇がこの1945年初めに降伏を決断できていれば、多くの日本人民間人は死亡せずにすんだことは明らかである。」
※2007年8月 浅井基文(広島平和研究所)氏によるインタビュー

しかし、東京大空襲などの各地空襲はアメリカ軍の明らかな国際法違反です。戦争にもルールがあり、戦時国際法と呼ばれるハーグ陸戦法規やジュネーヴ条約に軍事目標以外への攻撃禁止(降伏者、負傷者、民間人等の攻撃禁止)とあります。したがって民間人を殺戮してはいけないことであり、むしろアメリカが行ったこの点は大変おおきな問題だと私は指摘せざるを得ません。

さて、「はだしのゲン」は少年ジャンプでの掲載後、昭和52年から54年は文化評論、昭和56年から59年は教育評論という雑誌で連載されています。『文化評論』は日本共産党系の論壇誌で、『教育評論』は日教組(日本教職員組合)の機関紙です。要するに著者の思想だけではなく、日本共産党の思想があり、日教組によって子供への思想教育のために学校の図書室に置かれているということです。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年12月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。