中国の王毅外相が韓国を訪れ、文大統領をはじめ、要人と会談をしました。韓国側は王外相を手厚くもてなし、韓国側がこのきっかけをいかに重視していたか察することができます。
中国と韓国の関係はTHAADを設置した朴槿恵前政権以降、冷えた関係とされ、その後、文大統領が中国を訪問するも仕打ちのような対応でありました。朴政権も当初は中国礼賛であったものの途中から方針変更した経緯があります。文大統領にとっては任期の半ばを過ぎた今、アメリカとのディールから中国との交渉に本腰を入れる可能性は捨てきれないでしょう。
韓国政権は歴史的にもポリシーの安定性が欠如しています。例えば李明博政権時は当初、日本と比較的良好な関係だったのに2011-12年の韓国憲法裁判所での慰安婦、および徴用工判決で180度方向転換し、異様なまでの行動ぶりだったことを覚えている方もいらっしゃるでしょう。つまり、一つの政権でもある事象をきっかけに全く違う顔になれる日和見主義が朝鮮半島全体の特徴であります。
文大統領はこのところ、トランプ大統領との交渉に行き詰まっているのみならず、駐留米軍の費用問題でも頭を悩ませています。更に北朝鮮との関係で徹底的な制裁を前提とするアメリカに対してグレーゾーンにいることもアメリカがいら立つ原因であります。日本が決定した輸出管理規制にしてもGSOMIA破棄に対してアメリカが異様に反発したのも韓国のグレーなふるまいにくさびを打ち込むことが背景にあったわけです。
ところが朝鮮人のメンタリティとしてはこれは逆の刺激を与え、より気持ちが離れる方向に走る傾向が見て取れます。今、韓国が中国にすり寄るのは当然の行方だとみてよいでしょう。
では中国から見た韓国はどうなのでしょうか?米中関係を見る限り中国は自分の味方を増やしたいのは当然です。北朝鮮には刺激をせず、韓国を取り込めば懸案のTHAADの撤廃も視野に入るかもしれません。(その場合は米韓関係は決裂と考えてよいでしょう。)
中国が上手なのは外交的に日本も取り込もうとしている点でしょうか?習近平国家主席の来年4月の来日がほぼ決まりそうです。この来日はむしろ中国側として臨むところのはずです。それは経済などを通じた日中関係をより強固にし、東アジアの同盟を結ぶとアピールする土産があれば日本の経済界からはウェルカムされる公算が高いからです。
経済を取り込めば政治はついてくる、と考えれば安倍首相は中国を無下に扱えなくなります。これは外交的にアメリカから猛烈な反発がありそうですが、全方位型外交を推進する安倍首相としてはうまく操縦するのでしょう。
私見ですが、アメリカは外交的にみて、このところ戦略ミスをしているように感じます。一方の中国は虎視眈々というのがぴったりくる表現だと思います。どちらを味方するわけではなく、客観的にみると表立った行動が少ない中国の戦略は巧妙かもしれません。アメリカは世界中の表舞台で必死に踊ろうとするけれどその踊りが評価されにくくなっている半面、中国は香港問題など矢面に立つ案件がある中でぐっと我慢しているという感じです。
韓国はその温度差も感じ取っているはずで日和見主義ならば強いものに巻かれろ、ですし、歴史的に中国とは上下関係があったわけですから中国にすり寄ってもなんら不思議ではないのであります。一部の報道で北朝鮮の核には中国の核の傘を貸そう、などという過激な内容もあるようですが、その真意はともかく、中国も韓国を取り込みに動く可能性は大いにあるでしょう。それはアメリカの外交的敗北を意味するとも言えます。となればトランプ大統領の再選が危ぶまれる公算も当然あり得ると考えています。
韓国内の報道は王毅外相の訪韓について様々な意見が出ていますが、もともと韓国の報道が報道方針のもと、答えありきである点を踏まえると本当の意味は真実を見据えて自分で考えないとわからないとみています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年12月9日の記事より転載させていただきました。